エスパルス2012:第18節 / 二つの顔


メモリアルマッチもスコアレスドロー。GW後は2点しか取れず、七戦勝ちなし。この一週間、梅雨空のごとくどんよりした気分で過ごすことになるのかと思いきや、意外にさばさばと過ごせた。
仕事中にも脳内で「エスパルスどうすりゃ委員会」を開いてひとり激論を戦わせているのだから困ったものである。


これはいよいよ秘密兵器を出すときが来たか……、マルコーン2号を。
イブラヒモビッチバロテッリサマージャンボ買ってくるで待ってて。え、5億じゃ足りない? 何なら俺がひと肌脱いで、雷獣シュートを叩きこんでや  
思考はだんだんブラックな自虐に傾くのだったが、熟考の末に編み出した ‘トンネル脱出大作戦’ の秘策はこれだっ!


 ◎「毎試合、ジェジンに来てもらう」
   でもって、うまいこと言ってジェジンを働かす


妙案だと思うが、どうだろうか? 我ながら冴えてる。自画自賛なのである。仕事の方はさっぱりだが。


でも、本当の結論は‘誰か’ではなく‘やり方’。この頃は、現在の状況はCFだけの問題ではないと思っている。こういうときはシンプルにプレーするに限る。どんな長いトンネルも走り続けなければ抜けられっこないのである。



【 7月14日 / Jリーグ第18節:清水 3-5 柏 / ‘二つの顔’ 】



まったく荒れた印象はなかった。なのに、両チーム合わせて三人も退場者がいて、終盤は9人対10人のドタバタ劇。こちらに良くない先入観があるとはいえ、スタンドの実感とあまりにかけ離れた主審の裁定というのはどうなんだろう。南アフリカW杯では控えめに笛を吹いているように見えたN主審だが、あれはよそ行きの顔なのだろうか?
ジョルジ・ワグネルと吉田が退場となった場面は、自分の席からは逆サイドで何があったのかはわからなかった。ただ、J屈指のレフティを抑えようとするここのマッチアップは前半からこのゲームのキーポイントでもあったはずで(格下の吉田が健闘していた)、「そうならないように」レフェリーは注意を払うべきだった。事務的なカードの多さは主審の試合管理・運営能力を表しているといえるだろう。


     


試合そのものは、次々に状況が変化する中で適切な対処をした柏の総合力、というかネルシーニョ戦術に清水が屈した形となった。清水は久しぶりに小野と高原がスタメンに名を連ねたものの、90分使う前提での先発ではなかったことがこの悲劇喜劇の誘因にもなった。この状態はチームとして、けして健康ではない。
一人少ない状況で投入した高木をもう一人減ったことから下げざるをえなかったゴトビ監督の采配は、結果的に柏に徹底的なサイド攻撃を許して急造のDFラインを疲弊させ、最終的に破綻した。
バックアッパーのメンツにも問題があった。攻撃的な選手を並べることが、必ずしも攻撃的な戦いには直結しないのである。


     


十人ながら2点リードした状況で九人になる。そこからどうするのか? 穴埋め的な交代しかできなかった清水に対して、柏の智将は「どうやって」のメッセージ付きの選手を送りこみ、効果的にポジションを動かして、数的優位に拍車をかけた。均衡が崩れてゲームが動き出してからは昨年の32節同様に熟成度、経験値、集団の共通理解、応用力、すべてに於いて柏が上回った。
二つ、あるいはそれ以上の有効な柔軟な選択肢を柏は持ち、選手が適宜対応した。清水はプランAまたはBだけの対症療法だった。もし、ネルシーニョが清水の監督だったら、どうしていただろう。つい、そんな不埒なことを考えてしまった。


     
     


十人になってから2点を奪い、九人でも決定機はつくった。オープンな展開になった途端に得点できたということは、得点欠乏症に悩んでいた最近の清水のストレスが、実は自分たちでスペースを狭くしていたことの反証でもある。
得点するけれど失点のリスクも高い。失点しないようにすれば得点もできなくなる。このチームの両極端な裏表が一試合中に露わになった。本質的には理詰めではないラフなサッカーなのだが、それを堅いものにしようとして思いがけず陥ったジレンマ。それが長いトンネルの正体かもしれない。
数的不利でも得点したのは評価したい。だが、それよりも、立ち上がりの好機をものにしてゲームをマネージメントできてこそ、初めて自力(勝者のメンタリティ)がついたといえるのだろう。それまではまだ時間がかかりそうだ。


     


シーズン半ばを折り返して、これで今年も柏には連敗。一チームに二敗しない、アウェーで負けてもホームで勝って五割をキープしたいところだが、後半戦最初の傷口は小さく開いた。絆創膏で済むのか、包帯が必要になるのか。
昨日も九州は大雨が降った。今節も鳥栖、それにJ2大分、熊本、北九州などで試合が予定されているが、サッカーどころじゃないという方も大勢いるだろう。その苦難を思えば、清水の梅雨前線なんてたいしたものではない。
浩太、顔を上げろ!