2012-01-01から1年間の記事一覧

鹿島 茂 / 「レ・ミゼラブル」百六景

はっきりいって、これは名著だと思う。 【 鹿島 茂 / 「レ・ミゼラブル」百六景〈新装版〉 / 文春文庫 (497P) ・ 2012年11月(121226-1231) 】 ・内容 なぜジャン・ヴァルジャンは、パリのその街区に身を隠したのか? 里親から虐待を受けるコゼットが、夜店で…

ユーゴー / レ・ミゼラブル

最近やっと彼女ができた会社の後輩が、今度映画に行くことになってと上機嫌で訊いてきた。「レ・ミゼラブルと大奥とエヴァンゲリオンとどれがいいですかねー?」 その前に選択肢がおかしくないかと思ったが、黙って「大奥」を薦めておいた。 たとえ二人がう…

情熱のピアニズム

【 情熱のピアニズム 】 公式HP→映画『情熱のピアニズム』 フランス人ジャズ・ピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニ(1962-1999)のドキュメンタリー。 「ペトルチアーニは凄い!」というのはこの映画の感想ではない。生前のインタビュー、ライブ映像に関係…

P・D・ジェイムズ / 高慢と偏見、そして殺人

今年夏の刊行からずっと読むのをためらっているのが高野史緒さんの『カラマーゾフの妹』。出てすぐに飛びつかなければそのままスルーになるのがだいたいいつもの自分のパターンだが… これには飛びついた。原版の記憶があやふやな「カラマーゾフ」よりは、新…

SION ライブ

【SION アコースティックLive 2012 〜SION with Bun Matsuda〜 / 12月16日 浜松窓枠】 十二月、今年もSIONサンタが浜松にやって来た。 師走恒例のお楽しみ、年に一度のSIONライブが週末に迫った12日、彼のブログをのぞくと、なな、なんと、足を骨折したとい…

稲泉 連 / 復興の書店

【 稲泉 連 / 復興の書店 / 小学館 (199P) ・ 2012年 8月(121212-1215)】 ・内容 それは何も仙台の書店に限った風景ではなかった。苦難をのり超えて開店した多くの店舗で、活字に飢えているとしか言いようのない人々の姿が目撃された。本はただの「情報」…

村雲 司 / 阿武隈共和国独立宣言

12月8日夜、NHKスペシャル・シリーズ東日本大震災「救えなかった命 〜双葉病院 50人の死〜」。 福島第一原発から4.5キロの双葉病院(大熊町)で起きた悲劇を検証する(原発事故直後の大混乱の中、多くの寝たきり高齢者を医療設備が整わない状態で移送しなけ…

宮下奈都 / 終わらない歌

宮下奈都さんの本はいつもA書店(アマゾンではない)で買う。中型のいわゆる新刊書店で自宅から最寄りということもあるが、いつからか新作が刊行されるたびに著者直筆メッセージが文芸コーナー入り口に飾られるようになったのだ。 今回も店員さんの手書きポ…

小田雅久仁 / 本にだって雄と雌があります

本年ベストというかオールタイム・ベスト級の一冊! こういう作品が芥川賞に選ばれればいいのに…… どうですか、奥泉先生? 《帯文より》 ― どうかしてます。いい意味で。(岸本佐知子) ― すでに古典の風格。殿堂入り確実!(大森望) 【 小田雅久仁 / 本に…

エスパルス2012 : 第34節 / ありがとう「アウスタ」

【 11月17日 / Jリーグ第32節 : 清水 1-3 G大阪 / ‘CF軽視のサッカー’ 】 ハーフラインより向こう側が白く霞んで見えないほどの強風雨下での試合になった。 後半開始早々、PKを得る。ボールをセットする大前の横をすたすたと岩下が GKに歩み寄って、何事か…

奥泉 光 / 虫樹音楽集

「クワコー」とのギャップがすごそうなので、続けて読むのはやめておいた。 勝手にサブタイトルをつけるならば、「ダークサイド・オブ・奥泉光」、または「趣味と実益を兼ねた奥泉光教授のスタイリッシュなジャズ生活」といったところか。 こういうのも大好…

小松左京 / 日本アパッチ族

祝・復刊! 個人的にこれほど再刊を待ちわびた作品はない。たった一冊の文庫本。べつにアマゾンに注文しても良かった。でも、これまでにどれだけこれを探してきたことか。これを読まなきゃ始まらないという思いこみも先走る。今日こそは絶対に見つけてこの手…

奥泉 光 / 黄色い水着の謎

【 奥泉光 / 黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2 / 文藝春秋 (256P) ・ 2012年 9月(121110-1114)】 ・内容 夏だ!海だ!クワコーだ! 文芸部の海合宿に誘われたクワコー。だが到着早々、水着が盗まれるという事件が発生する。大人気ユ…

筒井康隆 / ビアンカ・オーバースタディ

【 筒井康隆 / ビアンカ・オーバースタディ / 星海社 (192P) ・ 2012年 9月(121107-1109)】 ・内容 あらゆる男子生徒の視線をくぎ付けにする超絶美少女・ビアンカ北町(きたまち)の放課後(オーバースタディ)はちょっと危険な(アブナイ)生物学の実験研究にの…

小松左京 / SF魂

【 小松左京 / SF魂 / 新潮新書 (192P) ・ 2006年(121031-1105)】 ・内容 私が日本を沈没させました…。「日本沈没」でベストセラー作家となった日本SF界の巨匠が語る、その黄金時代、創作秘話、SFの真髄。今なお輝きを失わない作品群は、どのような着想で…

エスパルス2012 : 二十年目のOle! S-PULSE

今年七月の二十周年記念に合わせて書きながらもチームは長い低迷期に入ってしまい、アップする気になれなかったこの記事。ナビスコで優勝したらと思っていたが、それも叶わず。そうこうしているうちに今年も終わってしまいそうなので、季節外れの変なタイミ…

エスパルス2012 : YNC決勝 / 優勝未遂、オレンジの狼煙

【 11月 3日 / YNC決勝 : 清水 1-2 鹿島 / ‘革命前夜、優勝未遂’ 】 「前よ、前、前にやんなきゃ、もおっ!(怒)」 「同じことばっかりやってるね」 1点を追う延長後半、隣にいらした母娘と思しき壮年の熱血奥さまとクールなお嬢さんの声である。ふだんは…

小松左京セレクション

【 小松左京セレクション 1 日本 (東浩紀 編)/ 河出文庫 (512P) ・ 2011年11月(121025−1027)】【 小松左京セレクション 2 未来 (東浩紀 編)/ 河出文庫 (512P) ・ 2012年 3月(121027−1030)】 ・内容 小松左京生誕八十年記念/追悼出版。代表的短篇、…

福島正実 / 未踏の時代

【 福島正実 / 未踏の時代 日本SFを築いた男の回想録 / ハヤカワ文庫JA (320P) ・ 2009年(121021−1024)】 ・内容 1959年12月、早川書房から「SFマガジン」が創刊された。初代編集長は福島正実。それまで商業的に成功したことのなかったSFを日本に根づかせ…

最相葉月 / 星新一 一〇〇一話をつくった人

『日本SF精神史』もそうだが、この評伝も「日本SF大賞」受賞作なのだった。 【 最相葉月 / 星新一 一〇〇一話をつくった人 / 新潮文庫 (上404P、下477P) ・ 2010年 3月(121014−1020)】 ・内容 『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』『人民は弱し 官吏は強…

エスパルス2012 : YNC準決勝 / 歌声よ響け!

さあ、正念場の一週間がやってきた。ダービー、天皇杯、ナビスコ準決勝と続く三連戦。三連勝だけに意味があると自分は思っている。全部勝てるかどうかに今年だけではなく来季以降のエスパルスも懸かっている。 中心選手がチームを去り、残された若手が主力と…

長山靖生 / 戦後SF事件史

【 長山靖生 / 日本SF精神史 ─幕末・明治から戦後まで / 河出ブックス (227P) ・ 2009年12月(121007−1008)】 ・内容 日本SFの誕生から150年、「未来」はどのように思い描かれ、「もうひとつの世界」はいかに空想されてきたか…。近代日本が培ってきた、多様…

レイ・ブラッドベリ / 瞬きよりも速く

【 レイ・ブラッドベリ / 瞬きよりも速く [新装版] / ハヤカワ文庫SF (430P) ・ 2012年 9月(120929−1002)】Quicker Than The Eye by Ray Bradbury 1996 訳:伊藤典夫・村上博基・風間賢二 【 レイ・ブラッドベリ / 太陽の黄金の林檎 [新装版]/ ハヤカワ文…

石黒 浩 / 人と芸術とアンドロイド

【 石黒 浩 / 人と芸術とアンドロイド 私はなぜロボットを作るのか / 日本評論社 (199P) ・ 2012年 9月(120923−0926)】【 石黒 浩 / ロボットとは何か / 講談社現代新書 (240P) ・ 2009年11月(120926−0929)】 ・内容 誰にも真似できない奇抜な発想で、人…

コニー・ウィリス / ブラックアウト

大好きなコニー・ウィリス十年ぶりの新作。『ドゥームズデイ・ブック』『犬は勘定に入れません』と同じくタイムトラベルもので、今回はいよいよ第二次大戦下のロンドンが舞台らしい。もちろん翻訳は大森望さん、とくれば面白くないわけがないであろう、本年…

壺井栄 / 二十四の瞳

自分にとって「二十四の瞳」といえば…… 1994年、名古屋御園座、斉藤由貴の大石先生。ただし、苦労してチケットを取ったのにこの舞台は見られなかった。(画像はテレカ) そのやんごとなき理由についてはここでは語るまい。 子どもの頃、家事を済ませて一日の…

サン=テグジュペリ / 星の王子さま

永らく岩波書店が保有していた著作権が切れたとのことで、現在日本には「星の王子さま」が何種類もある。児童向け絵本から大人のメルヘン的な本まで。訳も池澤夏樹、倉橋由美子、河野万里子から辛酸なめ子までヴァリエーションに富む。 今回あらためて手に取…

安田 寛 / バイエルの謎

【 安田寛 / バイエルの謎 日本文化になったピアノ教則本 / 音楽之友社 (280P) ・ 2012年 5月(120830−0904)】 ・内容 「バイエル」は、日本のピアノ文化にもっとも影響を与えた教則本。なぜバイエルだったのか? バイエルとは何者か? 本当に実在したのか? …

平山夢明 / 或るろくでなしの死

【 平山夢明 / 或るろくでなしの死 / 角川書店 (274P) ・ 2011年12月(120824−0828)】 ・内容 その一線を、超えるべし。狂気の淵にたたずみ惑う人間たちの“その瞬間”。震えながら、戦きながら、そうとは知らずに……七人の人間たちが迎えた、決定的な“死の瞬…

高木仁三郎セレクション

【 高木仁三郎セレクション (中里英章、佐高信 編) / 岩波現代文庫 (377P) ・ 2012年 7月(120819−0823)】 ・内容 生涯をかけて原発問題に取り組み、最期は原子力時代の末期症状による大事故の危険と、放射性廃棄物がたれ流しになっていく恐れを危惧しつ…