2012-01-01から1年間の記事一覧

赤坂真理 / 東京プリズン

八月十五日にこれを読み始めたのはまったくの偶然だったが、盆休みで助かった。久しぶりの一気読みになった。読んで良かった。それ以前に、よくぞこれを書いてくれたと著者に感謝したい気持ちになった。けして読みやすくはないし、重い、堅苦しい内容ではあ…

重松清 / 星になった男 阿久悠と、その時代

♪ 初めてのルージュの色は紅すぎてはいけない / 大人の匂いがするだけでいい初デート前の乙女のドキドキ感を歌った石野真子‘狼なんか怖くない’(昭和53・1978年)。憎らしいほど巧い、化粧品CM曲かと思われるほどにあざとい歌い出しである。しかも作曲は吉田…

横田増生 / 評伝 ナンシー関

友人に借りて何冊か読んだことがあるナンシー関。「聞く猿」「何の因果か」「小耳にはさもう」、それにリリー・フランキーと対談してるやつ。どれも面白かったし、さりげなく名言が散りばめられていて(たとえば、五輪選手の決まり文句に対して「『感動させ…

青山文平 / 白樫の樹の下で

【 青山文平 / 白樫の樹の下で / 文藝春秋 (256P) ・ 2011年 6月(120803−0806)】 ・内容 賄賂塗れの田沼時代から清廉な定信時代への過渡期。御家人3人の剣術仲間を巻き込む辻斬り「大なます」。傑作時代ミステリー。 第18回松本清張賞受賞作 『かけおちる…

米原万里 / 嘘つきアーニャの真っ赤な真実

2006年に米原万里さんが亡くなったときに「世界わが心の旅」の再放送を見た。当時はこの番組が『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』を下にしてつくられたものだと思いこんでいたのだが、実際には先にNHKのこの旅番組があって米原さんの積年の夢が実現、それから…

青山文平 / かけおちる

【 青山文平 / かけおちる / 文藝春秋 (246P) ・ 2012年 6月(120722−0728)】 ・内容 江戸寛政期、北国の小藩と江戸が舞台。殖産興業を計り、地方役人から重役の地位に出世した阿部重秀と、その養子で、藩内で有数の剣の使い手である長英の2人を軸に物語は…

エスパルス2012:YNC準々決勝 / スピード不足

【 7月25日 / YNC準々決勝 :清水 0−1 名古屋 / ‘スピード不足と逃げのパス’ 】 今日の名古屋は手強かったか? 太刀打ちできない相手だったか? 選手に手ごたえはあったはずだ。でも負けた。 名古屋からするとどうだったろう。清水の攻撃は脅威だったか? ノ…

樺山三英 / ゴースト・オブ・ユートピア

この頃、書店に行くたびに購入を迷うのは小川洋子さんと川上弘美さんの新刊。どちらも酒井駒子さんのイラストが表紙カバーを飾っている。川上さんの「七夜物語」上下巻にいたっては、カバーのみならず本体全篇に酒井さんの絵がちりばめられていて、「うーん…

中村文則 / 迷宮

【 中村文則 / 迷宮 / 新潮社 (185P) ・ 2012年 6月(120703−0706)】 ・内容 この迷宮事件に強く惹かれるのはなぜか。彼女が好きだから? それとも ─。「僕」がある理由で知りあった女性は、一家殺人事件の遺児だった。密室状態の家で両親と兄が殺され、小学…

エスパルス2012:第18節 / 二つの顔

メモリアルマッチもスコアレスドロー。GW後は2点しか取れず、七戦勝ちなし。この一週間、梅雨空のごとくどんよりした気分で過ごすことになるのかと思いきや、意外にさばさばと過ごせた。 仕事中にも脳内で「エスパルスどうすりゃ委員会」を開いてひとり激論…

エスパルス2012:第17節 / 好敵手と次章への扉

エスパルス創設二十周年のメモリアル・ウィーク。藤田俊哉の引退と風間兄弟の川崎加入が報じられた。 藤田はオランダで指導者の道を進む。高校時代からずっと変わらず、クールなテクニシャンはフィールドの小妖精のようだったが、汗と泥も好んだ。MFとしての…

中脇初枝 / きみはいい子

購読している中日新聞県内面の「あのねあのね」。読者投稿による子どもたちの何気ない言葉を紹介する小コーナーなのだが、毎回くすり笑わされたり、驚かされたり。 ・(外出先から帰るとき、すっかり陽が暮れていました) 母「暗くなっちゃったねー、まっ暗…

宮下奈都 / 窓の向こうのガーシュウィン

【 宮下奈都 / 窓の向こうのガーシュウィン / 集英社 (248P) ・ 2012年 5月(120627−0630)】 ・内容 十九年間、黙ってきた。十九年間、どうでもよかった。「私にはちょうどいい出生だった」未熟児で生まれ、両親はばらばら。「あなたの目と耳を貸してほしい…

エリン・モーゲンスターン / 夜のサーカス

【 エリン・モーゲンスターン / 夜のサーカス / 早川書房 (557P) ・ 2012年 4月(120618−0626)】 THE NIGHT CIRCUS by Erin Morgenstern 2011 訳:宇佐川晶子 ・内容 夜だけ開く、たとえようもなく豪奢で魅惑的な夢のサーカス。そこを舞台に競い合うよう運命…

エスパルス2012:第15節 / 銀河系代表ゴールと999ゴール

【 6月19日 / EURO2012 / イブラヒモビッチのゴール 】 右から山なりのクロスが送られる。ゆっくりバイタルエリア中央に入ってきた2メートル近い大男がジャンプ一閃、宙に身をひるがえして力強くミートしたボールは正確にゴール左隅を射抜いた。 その間、ほ…

イアン・マクドナルド / サイバラバード・デイズ

【 イアン・マクドナルド / サイバラバード・デイズ / 早川書房 (462P) ・ 2012年 4月(120612−0617)】 Cyberabad Days by IAN McDONALD 2009 訳:下楠昌哉・中村仁美 ・内容 〈ディック賞特別賞受賞〉ロボット戦士にあこがれる少年の冒険譚「サンジーヴと…

パスカル・メルシエ / リスボンへの夜行列車

“哲学小説”なんて以前ならパスしていたはずだが、今の自分には巨大なザリガニの襲来に怯えるロカンタンの免疫がある(笑)。 二段組み、480ページ。一読しただけではすんなり頭に入ってこない文がたくさんあるのも想定内。感想を書けるだけのものが自分に残…

エスパルス2012:YNC第6節 / 新しいスパイク

代表ウィークである。W杯最終予選の三連戦がある。ユーロも開幕した。ミスは許されないシビアな戦いが行われている。 オマーンとヨルダンとの代表の二試合を見てつくづく感じたのは、戦術がどうあれフォーメーションがどうであれ、チームの命運は最終的にエ…

舘野泉 / 左手のコンチェルト

ちあきなおみに続いてクラシックピアニスト舘野泉。この脈絡のなさ…(泣) でも、これは‘人間の王’、つまりオオカミ のシリーズなのだ。 【 舘野泉 / 左手のコンチェルト / 佼成出版社 (221P) ・ 2008年(120527−0529)】 ・内容 脳溢血で半身不随の身体にな…

石田伸也 / ちあきなおみに会いたい。

先日、書店にて。文庫コーナーに一段高く積まれているのはまたしても「殺人鬼フジコの衝動」、しかも“限定版”ときた! 無視しようとしたのに勝手に手が動いてしまった。〈次作への序章となる書き下ろし「私は、フジコ」との二冊セット〉、とのこと。ふーん。…

山白朝子 / エムブリヲ奇譚

怪談専門誌「幽」掲載の9話を集めた連作短篇集。幽玄耽美な表紙ジャケットに魅かれて買ったものの、怖いのは嫌だな〜と思っていたのだが、これがなかなかどうして……! 【 山白朝子 / エムブリヲ奇譚 / メディアファクトリー (270P) ・ 2012年 3月(120519−0…

小川一水 / トネイロ会の非殺人事件

【 小川一水 / トネイロ会の非殺人事件 / 光文社 (249P) ・ 2012年 4月(120512−0515)】 ・内容 この中に、犯人じゃない人がいるみたいですね。 ―月面基地に派遣されるための訓練に。あるいは、少なからぬ遺産の分配を得ようと。はたまた、憎むべき脅迫者へ…

瀬戸内晴美 / 青鞜

中日新聞5月2日夕刊。 社会面に「脱原発 寂聴さんハンスト」。経産省前で大飯原発再稼働反対を訴える市民活動の記事。写真に寂聴さんと並んでいるのは鎌田慧さんだ! 最近読んだ「大逆事件」の本の著者がそろって反原発運動に参加しているのだった。(澤地久…

エスパルス2012:第11節 / 自分たちのサッカー

先日、変な夢を見た。なぜか自分がエスパルスFW伊藤翔に「勇気出してくださいよ!」と叱咤されているという……。 前後の脈絡はぽっかり欠けてこの部分だけはっきり憶えている。夢判断をするまでもなく、最近の実生活で深層心理に影響を及ぼしそうな悩みや迷い…

上田早夕里 / ブラック・アゲート

【 上田早夕里 / ブラック・アゲート / 光文社 (347P)・2012年 2月(120430−0503)】 ・内容 人体に寄生し、羽化する際に人の命を奪う新種のアゲート蜂が日本各地で猛威を振るう。瀬戸内海の小島でもアゲート蜂が発見され、病院で働く高寺は愛娘の体にこの寄…

エスパルス2012:第9節 / ゴトビ・ミステリー

前節のアウェーFC東京戦、エスパルスは二名の退場者を出しながら、高木俊幸の起死回生の一発で勝った。 一人少なくなったチームがより奮闘して試合が白熱することはサッカーでは往々にしてある。そもそもCF不在の今のエスパルスは始めから十人で十一人の相手…

宮内悠介 / 盤上の夜

昨年一月に行われたプロ棋士対コンピュータの「将棋電王戦」、米長邦雄(永世棋聖) 対 ‘ボンクラーズ’(将棋対局ソフト)。コンピュータが(人間の)名人を破ったことで大きな話題になったのは記憶に新しい。しかし、その結果を受けてただちに人間よりコン…

ピアノマニア

【 ピアノマニア 】PIANOMANIA 2009年 ドイツ・オーストリア合作 ・内容 現代音楽の旗手であるピエール=ロラン・エマールがバッハの傑作「フーガの技法」を録音することになり、演奏するピアノにスタインウェイ社の「245番」が選ばれた。同社の技術主任であ…

鴨居羊子 / 女は下着でつくられる

「女の子は新しいラブが始まると、新しいブラが欲しくなる」 ほほぉ、そうなのかね。寄せたり上げたり、引き締めたり持ち上げたり。女はいろいろ大変らしい。男性目線を意識したCMの是非はともかく、ファッションとしての下着がここまで普通に受け入れられる…

エスパルス2012:YNC第3節 / 永遠にヤングエスパルス

新年度が始まったばかりというのに、早くも二回目の午後休を取ってアウスタへ。休暇取得申請書には「エスパルス休暇。負けたら明日休む」と書いて出した。 同僚がまだあくせく仕事している夕刻に、自分はオレンジのシャツ着てオレンジのメガホン叩いて“レー…