エスパルス2012:第11節 / 自分たちのサッカー


先日、変な夢を見た。なぜか自分がエスパルスFW伊藤翔に「勇気出してくださいよ!」と叱咤されているという……。
前後の脈絡はぽっかり欠けてこの部分だけはっきり憶えている。夢判断をするまでもなく、最近の実生活で深層心理に影響を及ぼしそうな悩みや迷いの類に心当たりはない。決断を先送りしたり消極的に避けていることもない、と思う。どこで勇気を出せというのかさっぱりわからない。自分は基本的にストレス・フリーの人種で、めったに夢を見ないし見てもすぐ忘れてしまう質だ。むしろ、こんなわけのわからぬ夢を見てしまったことにこそ途惑いを感じてしまうのである。
何で伊藤翔が出てくるのだ? もちろん清水の選手だから応援してはいるけど、まだ彼に格別な思い入れがあるわけではない。そもそもあいつが俺にそんな口きけるのかと、憤然として怒気を含んだあの口調を思い出すと妙に腹が立ってきたりして。それでふと気づいたのだが、この「お告げ」はもしかして…、、、伊藤翔潜在的ストレスであることの逆証明?
このストレスの解消法は実に簡単。エスパルスに関しては「全部、翔が悪い」ってことにしちゃえば良いのである。案外これは核心を突いているように思えないか。「ジミー・フランサ問題」とは実は、「あいつの問題」だったのである!


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【 5月12日 / Jリーグ第11節 :清水 1-1 C大阪 / ‘自分たちのサッカー’ 】



またも土曜出勤。しかも夜は新次長と新入社員の歓迎会がある。昼までに終わるはずの仕事が午後までかかってしまい、会社を出たのが14時過ぎ。14:50の新幹線で清水へ。15:30のキックオフにはとうてい間に合わないが、清水駅前でちょうどタクシーに乗ろうとしていた清水サポの人に声を掛け相乗りしてアウスタへ。
着いたのは前半十分ほど過ぎたところだった。思っていたより早く着いてほっとしたのも束の間、着席して直に失点してしまった。左右に大きく揺さぶられ、GK林が中途半端に飛び出したところをゴール前中央から蹴りこまれた。
その後もなんとなくふわふわして集中を欠いて見えたのは、自分の精神状態がそうだったからか。


     


厳しいアウェー戦をモノにして連勝中、好天の昼間のホームゲーム。スタンドの空気も心なしか緩く感じられる。こういうときは危ない。似たような状況の過去の試合でも何度も苦杯をなめてきたのを思い出す。
「自分たちのサッカーをすれば勝てる」 その過信には必ず隙がある。まず相手の長所を消さないで「自分たちのサッカー」はありえない。自分の役割、自分の仕事への自覚と自負をおろそかにしたまま「自分たちのサッカー」は実現されない。それが個々のプレーにより厳しく明確だったのはセレッソの方だった。エスパルスは始めから十人でやった方が良いのではないか? 変な勝ち方を続けているから土台は怪しくなるのだ。
この試合のポイントとして五輪世代の選手たちがクローズアップされていたが、セレッソにおける清武とキム・ボギョンの存在感に比べると、大前も高木もまだエスパルス限定の一パーツにすぎないと思わされた。重要なゴールを決めるようになったとはいえ、90分通してコンスタントに相手に脅威を与え続けて試合そのものの行方を決定づけてしまえる存在かというと、もの足りない。それは技術ではなく、責任感や使命感の表現の差として表れる。リーグとは違うステージでの戦いの経験値の差でもあるのだろう。


     
     


左サイドの李記帝(イ・キジェ)ェはキム・ボギョンにやられっぱなしだった。このまま敗れたら彼の心の傷になりはしないかと思ったが、追いついて終わって良かった。
今春、韓国の大学生だった彼はいきなり日本でプロサッカー選手になった。十分な準備期間があってプロになったのではないから、まだ後半になるとプレーの精度が落ちるのは仕方がない。毎試合が初対面の未知の相手との戦いの連続。それを考えると、大きな穴になっていないのは本当によく健闘しているし清水に貢献してくれていると思う。彼が加入していなかったら、今季エスパルスはどうなっていただろう。
これからの暑い季節に彼がどれだけ頑張れるか。プレッシャーも増していく中、彼の成長もエスパルスのこの夏に欠かせない。ここまで一人でエスパルスの左を支え続けている彼に、もっと感謝と称賛を。
(今季Jリーグの‘韓流’には目を見張るものがある。)


     
     


大前と高木の二枚看板を早々と退げたのは、突破口になれない彼らへのゴトビ監督の苛立ちの表れだったか。停滞感と焦燥がつのるじりじりした時間の中で、村松の横をケアしながらひたすらボールを散らし続けたのは河井。MFから右サイドにポジションを変えても軽いプレーをせず、彼が左右によくボールを動かしたからセレッソは終盤に押し上げるだけの体力を失った。その学習能力の高さ、適応力、対応能力は彼の人間性に直結しているのだろう。
残り数分。相手のクリアをことごとく拾い続けた岩下の姿は感動的だった。ため息ばかり続いたロスタイム最後のワンプレー、河井がダイレクトで中央に送ったクロスに飛びこんで相手GK、DFもろともつぶれたのは村松だった。
そして、ボールはいちばん走っていた人の足もとにこぼれてきた。


     
     


「まったく……」ブツブツぼやきながら浜松にとんぼ返りした。1000ゴールは目撃できそうもない。再来週のマリノス戦も仕事で行けない。飲み会の席上、酔いのどさくさにオレンジメガホンで平成生まれ(!)の後輩の頭をポカポカやりながら26日の仕事を代わらせようとしたが不首尾に終わった。