2014-01-01から1年間の記事一覧

舩橋 淳 / フタバから遠く離れて

ちょうど昨夜(12/26)、NHKスペシャル「38万人の甲状腺検査」が放送された。本書に収録されている津田敏秀氏の指摘(福島の甲状腺検査結果が過小評価されていると警告)を再読しつつ視聴。この期に及んで安全神話によりかかった予断を持った医師が検診し…

大江健三郎 / ヒロシマ・ノート 沖縄ノート

“ 1958年は「ヒロシマ」においてあらゆる文学者が写真家によってはるかに追いこされた年度になるだろう。いかなる文学作品も1958年に、この写真集よりもなお現代的であることはできなかった。(中略) わたしはこの少女の手術の一連の写真に、戦後の日本でも…

大江健三郎 自選短篇

【 大江健三郎 自選短篇 / 岩波文庫(848P)・2014年8月(141208−1219) 】 ・内容 「奇妙な仕事」「飼育」「セヴンティーン」「「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち」など、デビュー作から中期の連作を経て後期まで、全23篇を収録。作家自選のベスト版…

アルゲリッチ 私こそ、音楽

【 アルゲリッチ 私こそ、音楽 / 12月14日 浜松シネマイーラ 】 マルタ・アルゲリッチは不思議なピアニストである。演奏家が身に纏う求道者的な風情を少しも感じさせず、どの曲を弾いてもその奔放な剛腕の前には解釈の余地が介在しない。再現芸術というクラ…

SIONライブ

【SION アコースティックツアー 2014 〜SION + Sakana Hosomi & Kazuhiko FUjii〜 / 12月17日 浜松窓枠】 年末恒例のアコースティック・ライブで今年もSIONが浜松に来てくれた。 昨年から藤井一彦(G)、細身魚(Key)との三人のユニットでの演奏に変わった…

葉室麟、伊東潤 / 決戦!関ヶ原

【 葉室麟、伊東潤 / 決戦!関ヶ原 / 講談社(308P)・2014年11月(141210−1213) 】 ・内容 慶長五年九月十五日(一六〇〇年十月二十一日)。天下分け目の大戦、関ヶ原の戦いが勃発。 ―なぜ、勝てたのか― 東軍…伊東潤(徳川家康)/天野純希(織田有楽斎)/吉川…

アゴタ・クリストフ / 悪童日記

『悪童日記』三部作を読んだ。映画鑑賞に合わせて読むつもりでいたのだが、浜松のミニシアターに来るのは来年なので先に読んでしまった。 【 アゴタ・クリストフ / 悪童日記 / ハヤカワepi文庫(301P)・2001年(141202−1207) 】LE GRAND CAHIER by Agota K…

エスパルス2014:34節 / 残留決定

【 12月6日 / Jリーグ最終節 : 清水 0-0 甲府 / ‘残留決定’ 】 屈辱的な試合だった。シーズン最終戦、チケット完売のホームゲームで中盤不在の蹴るだけの、身体を張るだけの、残り時間を気にしながらのサッカーを見せられるとは……。 試合中はいろいろと言い…

斎藤健一郎 / 5アンペア生活をやってみた

【 斎藤健一郎 / 5アンペア生活をやってみた / 岩波ジュニア新書(217P)・2014年9月(141129−1201) 】 ・内容 電気に頼らない暮らしをしたい。東日本大震災をきっかけに節電生活を決意した記者が始めたのは「普通の生活はできなくなる」という5アンペア…

ポール・アダム / ヴァイオリン職人の探求と推理

【 ポール・アダム / ヴァイオリン職人の探求と推理 / 創元推理文庫(414P)・2014年5月(141123−1125) 】 【 ポール・アダム / ヴァイオリン職人と天才演奏家の秘密 / 創元推理文庫(408P)・2014年11月(141125−1128) 】 THE RAINALDI QUARTET by PAUL A…

エスパルス2014:天皇杯準決勝 / この道

【 11月26日 / 天皇杯準決勝 : 清水 2-5 G大阪 / ‘味スタ劇場’ 】 週末のリーグ戦をふまえてどういうメンバー構成で臨むか。ガンバも主力を休ませるのではないか、だとしたら必ず勝機はある、「もしかしたらアジスタ劇場も!?」と裏を読んだつもりで勇んで参…

エスパルス2014:32節 / 茨の道

来シーズン、松本山雅がJ1昇格する。反町監督に鍛えられて、犬飼智也は今季ここまで41試合フル出場。特筆すべきは6得点を記録していることだ。石毛、柏瀬、負けてるぞ! ナビスコは健太ガンバが優勝。広島に逆点勝ちした決勝の記者会見。 健 「(PKで0-2に…

星野智幸 / 未来は記憶の繭のなかでつくられる

【 星野智幸 / 未来は記憶の繭のなかでつくられる / 岩波書店(238P)・2014年11月(141118−1121) 】 ・内容 「過ちは過去を忘れることから始まる。私は過去を、未来の中に埋め込んでおきたい。この本は、未来に対する仕込みとしての過去なのだ」 読むべき…

ジャン・ジュネ / 泥棒日記

朝吹三吉が翻訳したものを読んでみようと思い、名訳といわれる『泥棒日記』を持っていたのを思い出した。押し入れ奥にあったのは、学生時代に古本屋で買った(たぶん100円か150円)昭和三十五年の第八刷、定価は350円。持っていたということは、読んだことが…

石村博子 / 孤高の名家 朝吹家を生きる

【 朝吹登水子 / サルトル、ボーヴォワールとの28日間 / 同朋舎出版(269P)・1995年(141103−1105) 】 サルトルがボーヴォワールを伴って来日したのは1966(昭和41)年の秋。四週間の滞在中、東京から関西、九州まで巡った彼らの旅をつきっきりでエスコー…

上橋菜穂子 / 鹿の王

【 上橋菜穂子 / 鹿の王 / 角川書店(上568P、下560P)・2014年9月(141029−1102) 】 ・内容 強大な帝国・東乎瑠にのまれていく故郷を守るため、絶望的な戦いを繰り広げた戦士団“独角”。その頭であったヴァンは奴隷に落とされ、岩塩鉱に囚われていた。ある…

エスパルス2014:29、30節 / 一進一退

【 10月22日 / Jリーグ第29節 : 清水 2-1 新潟 / ‘ノヴァへの道’ 】 前半、互いに右サイドからチャンスをつくる。清水はノヴァコヴィッチが右に流れて、中央の空いたスペースに石毛や六坂が走りこんで好機をつくったが、逆に元紀が決定機に絡めなくなってい…

加藤直樹 / 九月、東京の路上で

【 加藤直樹 / 九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響 / ころから(216P)・2014年3月(141021−1024) 】 ・内容 関東大震災の直後に響き渡る叫び声、ふたたびの五輪を前に繰り返されるヘイトスピーチ。1923年9月、ジェノサイドの街・東京…

深水黎一郎 / テンペスタ 天然がぶり寄り娘と正義の七日間

意図していたわけではないが、これも幻冬舎の本だった。 本書を買ったときに『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』というタイトルの本が目に留まって、それも幻冬舎だった。例によってちょっとだけ迷った。「天然がぶり寄り娘」か「いつまで女子問題」か。…

高杉晋吾 / 袴田事件・冤罪の構造

今年三月、1966(昭和41)年の事件発生以来実に四十八年ぶりに(!)袴田巌さんが解放された。新聞報道には目を通していたが、袴田さんは地元・浜松の人であり、何か一冊読んでおかねばと思っていた。 高杉晋吾さんのこの本、タイトルが変わっていたので気づ…

菅 淳一 / 横浜グラフィティ

山崎洋子『天使はブルースを歌う』(毎日新聞社、1999年)は、戦後横浜に多数生まれた混血児にスポットを当てたノンフィクション。 1945年八月末、厚木に降り立ったマッカーサーがまっすぐ向かったのは横浜だった。ホテル・ニューグランドが彼の宿舎となり、…

大木晴子(編) / 1969 新宿西口地下広場

【 大木晴子・鈴木一誌 編 / 1969 新宿西口地下広場 / 新宿書房(255P)・2014年6月(141007−1010) 】 ・内容 1969年2月、数人の若者が新宿西口地下広場でギターを鳴らして反戦歌を歌いだした。彼らは3月の毎週土曜日からここに集まり歌をうたい、自らを「…

小河原正己 / ヒロシマはどう記録されたか

【 小河原正己 / ヒロシマはどう記録されたか / 朝日文庫(上304P、下376P)・2014年7月(141001−1006) 】 ・内容 人類史上初の原爆により壊滅した広島中央放送局と中国新聞は、被爆翌日にラジオ、3日後に新聞が再開。以来2つの報道機関にとって、原爆報道…

エスパルス2014:27節 / One Heart

【 10月5日 / Jリーグ第27節 : 清水 3-0 C大阪 / ‘One Heart’ 】 バックライン裏が不安定というスカウティング通り、立ち上がりからスペースにボールを出してセレッソDFを後ろ向きに走らせた。ミーティングと練習で頭に入れていたことが通用するのがわかっ…

宮下奈都 / ふたつのしるし

宮下奈都さんの新刊は幻冬舎の「GINGER L(ジンジャーエール)」という季刊文芸誌に連載されていた作品。なるべく粗筋に触れないように感想を書く。 【 宮下奈都 / ふたつのしるし / 幻冬舎(216P)・2014年9月(140928−0930) 】 ・内容 「勉強ができて何が…

尾崎真理子 / ひみつの王国 ― 評伝 石井桃子

【 尾崎真理子 / ひみつの王国 ― 評伝 石井桃子 / 新潮社(575P)・2014年6月(140922−0927) 】 ・内容 この人がいなかったら、日本の「子どもの本」はどうなっていただろう―。『ノンちゃん雲に乗る』『クマのプーさん』など、作家として翻訳者として編集者…

エスパルス2014:25節 / バトル・オブ・シミズ

【 9月13日 / Jリーグ第23節 : 清水 1-4 浦和 / ‘運動会日和’ 】 磐田がいないために今年は一回だけのエコパでの試合。試合前に行われた恒例イベント「ご当地キャラ大運動会」のゆるゆる加減に和む。クシコスポスト、天国と地獄、ウィリアム・テル序曲… 運動…

M・R・コワル / ミス・エルズワースと不機嫌な隣人

【 メアリ・ロビネット・コワル / ミス・エルズワースと不機嫌な隣人 / ハヤカワ文庫FT(370P)・2014年4月(140918−0920) 】SHADES OF MILK AND HONNEY by Mary Robinette Kowal 2010 訳:原島文世 ・内容 19世紀初頭、女性のたしなみとして日常的に幻を創…

星野智幸 / 夜は終わらない

これまでで一番長い(?)星野智幸さんの本。500ページ、これは手強そうと一週間ぐらいかけて読むつもりでいたのに、予想外のリーダビリティの高さに驚き、星野智幸ってこんなに面白かったっけ?と嬉しい悲鳴を上げつつ、三日と少しで読了。またまた寝不足の数…

吉田司 / 下下戦記

今年の夏、ある一篇の詩を探して古本屋めぐりをした。 終戦の日前後の新聞コラムにその詩の一部が紹介されていて、全文を読みたいと思ったのだ。作者もタイトルも書かれてあったからわかっている。ただ、何という詩集に収められているのかがわからない。とり…