エスパルス2012 : 第34節 / ありがとう「アウスタ」

【 11月17日 / Jリーグ第32節 : 清水 1-3 G大阪 / ‘CF軽視のサッカー’ 】



ハーフラインより向こう側が白く霞んで見えないほどの強風雨下での試合になった。

     


後半開始早々、PKを得る。ボールをセットする大前の横をすたすたと岩下が GKに歩み寄って、何事か耳打ちした。たぶん、「あいつ左に蹴るから」とか何とか言ったのだろう。

     
     


今日のように悪コンディションなら、アバウトでもいいから前線にボールを入れればいいのだ。そのこぼれに集中するのだって一つのやり方のはずだが、金賢聖に勝負させようとするボールは片手で数えるほどしか入らなかった。
ゴールにいちばん近い位置にいるのはセンターフォワード。戦術は違えど、どのチームだって最終的にCF(点取り屋)がゴールする形をイメージしてチームを作り練習するものだが、今の清水はそうではない。実質十人でやっているみたいだ。CFを使えないサッカーは見ていてフラストレーションが溜まる(何のためのワイド攻撃なのか、何のためのMFなのか?)。だが、いちばんイライラしているのは呼んでも動いてもボールが来ない金賢聖本人だろう。彼はけしてさぼっているわけではない。反応は早くはないが能力が低いわけでもない。これなら「15点FW」とやらを連れてきたところで同じことだろう。
先日も書いたが、広島、仙台、磐田、鹿島に二勝しながらも、柏、新潟、G大阪には二敗。勝てる相手と勝てない相手がこんなにはっきりしていては上位には残れまい。今年はこのまま終わりそうだ。




【 12月1日 / Jリーグ最終節 : 清水 0-0 大宮 / ‘ありがとう「アウスタ」’ 】



ホームでの最終戦、負けなくて良かったと安堵する自分がいたのも確か。快勝の期待と、またしてもの惨敗の落胆、どちらの心構えもしていったつもりだが、残り時間が少なくなっていき、そういえば引き分け、それもスコアレス、という結末もありうるのだと思い出したりして。今年はもういいや、終わってくれてかまわない。そう思いながら見た90分だった。


試合を見つつ、つらつらと今シーズンここで起きたことを振り返ってみたりもした。
開幕直後の数試合で見せた、あの烈風の如き凄まじい‘ファーストプレス’は何だったのか? それから一転して、後ろでゆったりボールを回して無理に攻撃に行かない代わりに相手にも攻撃させない最少失点期もあった。ブラジル人FWらしからぬ助っ人がやって来て、去った。「みなさん、ご覧いただけましたか。これが俺たちが愛する清水エスパルスだ!」鈴木克馬さんの雄叫びに大歓声で応えた日があった。九人で勝ち、十人でも勝ったが、十一人での勝率はたいしたものではなかった。毎試合のようにスパイクをスタンドに投げ入れていた岩下。あろうことか、チームキャプテンがシーズン中に移籍した。高原は飼い殺しにされた。誰が何と言おうと、今季の清水を支えたのはヨンアピンだ。一年目の河井と石毛をオプションのはずの守備で酷使した結果、彼ら本来の攻撃的な持ち味は消えていった。八反田もついにボランチで使われなかった。センターフォワードが点を取らなければ総得点50、勝ち点50にはとても届かない。薄々感じている人もいると思うが、ゴトビ監督はエメルソン・レオンにちょっと似たところがある…… 結局は「ゴトビの功罪」についての長い話になってしまいそうなのでもう止めておこう。


     

来年度から「アウスタ」の通称はなくなる。(株)アウトソーシングの契約期間満了に伴い、新たな命名権パートナーを静岡市エスパルスが募集しているという記事が出ていた。アウトソーシングは今年七月、本社を東京に移転したために更新しない模様とのこと。(新ユニフォームのスポンサーにはなってくれるのかな?)
2009年からの四年間、サポーターに親しまれ定着した愛称はエスパルスの一時代として記憶されることだろう。どうもありがとう、アウスタ
(今日は「清水銀行デー」でもあったのだが、冠スポンサーのホームゲームにことごとく勝てないと感じているのは自分だけだろうか。ここにも‘プロ意識’の欠如が表れていないか?)


     


プーマボールを投げ入れる選手スタッフの中、浩太だけはたたずんでアストロビジョンに映し出された今年のダイジェスト映像をじっと見つめていた。

     
     


すでに全員が引き上げ「王者の旗」が流れているときも、ただ一人彼だけはゆっくりスタンドに挨拶して回っていた。そしてアウスタのピッチに一礼して姿が見えなくなった。