高校女子サッカー / ふり向くな、きみは美しい2013

【 1月13、14日 第21回全日本高等学校女子サッカー選手権 二回戦、準々決勝 】



高校女子の「選手権」。今年度から女子サッカーがインターハイ種目に加えられたために、これまでの夏の大会から男子同様に冬開催となった。
1月12日に32校が初戦を戦い、17日にチャンピオンが決まるトーナメント。決勝に進めば六日間で五試合を行うことになる。


     


さすがに仕事始め第一週の土曜日は休めず、12日の一回戦を見ることはできなかった。女子サッカーへの注目度は増しているといえ、全国的なレベルにはまだばらつきがある。出場校は各県一代表ではなく地域大会上位の32校。たとえば高知県は登録チームがゼロ、福井県はわずかに一校のみ。十校以下で県大会を行う県は半数に上る。
出場校を紹介する大会プログラムを眺めていて最も興味を持ったのは徳島の鳴門渦潮高校(四国第二代表)。本大会には25名が登録できるのだが、この学校の部員は13人。それもそのはず、創部初年度にしていきなりの初出場なのだ。こういうチームがあるから面白い。普及が進んで均質化していく前段階ならではのバラエティである。敗れたとはいえ昨日の初戦で、この13人でしかできないサッカーを十分に表現できたのだろうか。観戦できなかったのが残念だ。


     


《1月13日 二回戦》

藤枝順心 2−1 広島文教女子大附属(ゆめりあ多目的G)
 テクニックで上回る順心がワイド攻撃を展開。前半に2点を奪ってこのまま楽勝かと思ったが、文教女子大附属も粘り強く守って反撃、1点を返した。後半は五分五分だったが、順心が逃げ切ってベスト8進出を決めた。


常葉橘 1−2 京都精華(竜洋スポーツ公園)
 80分間、橘がほぼボールを支配したゲーム。しかし、勝ったのは京都精華。テレビのアナウンサーなら「なんという幕切れ!」と叫んだことだろう。前半を1失点にしのぐと後半セットプレー崩れから2点を奪って逆点に成功。シュートはその2本だけだったのではないか。GKの勇気あるプレーが何度も京都精華を救った。
勝った京都精華の選手たちも泣いていた。GKとDF陣の奮闘は報われた。常葉橘にとっては残酷な悪夢のような試合だったかもしれないが、耐えに耐え、粘りに粘った京都精華イレブンの姿はすがすがしく映った。劣勢=負けではないことを彼女たちは示した。それは常葉橘への最大のエールでもあっただろう。

     
     
     



《1月14日準々決勝》

藤枝順心 0-0(PK3-4) 常磐木学園(ゆめりあサッカーG)
 予報どおり大雨の中での試合となった。藤枝順心が過去四大会で三度優勝の女王・常磐木学園にはつらつと真っ向勝負を挑んで好勝負になった。順心は両WGがポジションチェンジして、ボールが止まるぬかるんだピッチで攻勢に出る。ロングボールをあきらめずに追い続けて前線からのプレスで前年チャンピオンを慌てさせた。好機を多くつくった前半のうちに得点できなかったのが悔やまれる。

     

悪天候下での試合。悪コンディションが実力差を際だたせることになるのか、はたまたテクニックやパワーの差を縮めることになるのか、どちらに転ぶかとても興味深かった。どちらにしろ初めに切れた方が絶対に負ける試合。両チームとも最後まで走りきり、ファイトした。それは負けられない相手だったから可能だったのだろう。高校生の女子が演じた「死闘」は、見ている側にも頬を叩く雨の冷たさを忘れさせた。

     
     

今年の順心はいつも以上によくまとまって一体感のある好チームだった。この年代では頭抜けたパワーの持ち主、「ヤングなでしこ」道上を封じるだけの、フィジカルではない、精神のタフさも備えていた。あと一押し。選手が替わってもまた新チームが今日の課題を克服するべくチャレンジする日を楽しみにしている。
三年生、お疲れさま。ナイスゲームでした。ありがとう!

     


負けて泣くぐらいでなくちゃ。勝って泣くぐらいでなくちゃ。やっぱり、サッカーっていいな。この大会を観戦するたびに毎回そう思わせられる。
今日行われるはずだった男子の選手権決勝は大雪のため中止になった。この女子の選手権、来年以降も冬でも雪の心配がない磐田での開催が続くよう願ってやまない。