天皇杯準決勝:清水vs名古屋

サッカーのこと、エスパルスのことも書こうと思っていたのに読書中心になってしまって一回も書かなかったので、今日こそは書いておこう。

……といっても、エスパルスに関してはいつも碧い海と蜜柑色のサポーターさんが書いていてくれるので、雑感風に。



【第89回天皇杯準決勝:名古屋グランパス-清水エスパルス/エコパスタジアム


 名古屋 1−1 清水
      (5PK3)


決定機を幾度となくつくりながら追加点を上げられず、延長・PK戦の末エスパルスは敗れた。


     


年末の澄んだ青空の下、風もない好日。今年最後の「エスパルス劇場」としては、まずまずだった…、いや、良かったか。エスパルスっぽい終わりだったじゃないか。傾いた冬の夕陽を浴びて愛野駅までの道のりを行く大群集のあいだにもそれほどの悲嘆は漂ってなかった。
楽勝大勝するのは稀で、勝つにしてもハラハラドキドキさせられるのは昔からのこと。ましてや悔やしい負けも「あと一歩届かず」も、あぁやっぱりですっかり慣れっこなのは我々サポーターばかりではない。そういう昔ながらのチームカラーが若い選手が多い現チームでも変わらないのが不思議だったり可笑しかったり。


今日のゲーム、エスパルス本田拓也のチームだった。
あのポジションにありがちな泥臭さやラフな個性は表立たず、しかしきっちりとクレバーに仕事をする。ファウルをするより受けることが多い。今日倒された回数はエスパルス選手中、一番だったのではないか。常に味方選手の視野に立つ。何気ないボールさばきがいちいち気が利いたパスになっている。前にスペースがあれば躊躇なく自らボールを運ぶ。テルがいれば安心、だけどもの足りなくも感じる部分を、今日の彼は一人でも感じさせなかった。
プレーメイク、ゲームコントロールをしていたのは(右サイドを圧倒することが出来ず、逆に守備対応に忙殺された)10番ではなくて彼なのであって、そのプレーは見ていて楽しかった。いたずらに急ぎ過ぎず、かといって簡単に最終ラインにボールを下げず、何本かシャビ・アロンソみたいな軌跡の対角線フィードを逆サイドに送ってもいた。

彼は大卒の今年二年目の選手。個人的には現代表のボランチよりサッカーセンスはずっと上だと思っている(今日もエコパに来ていた岡田監督が9月だったか日本平に来たとき、てっきり彼を見に来たのだと思った。結局岩下と海人が召集されたのだが、代表の生命線でもある中盤を今からいじる気はもうなかったのかもしれない)。
この一年でこれほどの選手に育ったのも伊東輝悦というサッカーセンスの塊が隣にいたからだろう。何よりボールをきれいに転がすのはテル譲りだ。たとえテルが出ていなくても彼がいれば、それはテルがいるのと同じ。そう思わせるだけの存在感を示した本田は来年以降、若い集団を束ねてセスクみたいなリーダーになっていく気がする。
「16」のジャージを買おうと思ったけど、新メンバーと背番号が決まってから、来年のお楽しみにしておくことにした。


藤本とキャプテン兵働が離脱した段階でPK戦の行方は決していたのかもしれない。本来なら彼ら二人は最後までピッチに残ってPKキッカーも務めなければならない選手のはずだ。PK戦の、それも一番手と五人目を担うべき選手が試合途中で下がってしまうのは寂しい。


昨年の五輪から代表戦まで出づっぱりで今季途中から明らかにパフォーマンスが落ちていた岡崎は、今日はリフレッシュして動きに切れが戻ったように見えた。
だが、確かに今日のゴールも彼らしいものではあったけれど、チームとして手放しで喜べたものではないはずだ。彼が攻守に頑張れば頑張るほど、アバウトなボールを入れてもマイボールにしてくれる「岡崎頼み」の展開になってしまう清水の悪癖が、特に前半強く出てしまった。岡崎を難しいボールはゴールするのに簡単なシュートは外すストライカーにしてしまうとしたら、その責任は清水の中盤にある。(チームより代表で点取ってるって、どういうこと?)
2006年の元旦、国立。晴れの舞台に矢島とのツートップでスタメン出場した彼は、しかし浦和の赤い壁の前にほとんど何もできなかった。今回はそのリベンジの絶好機のはずだったが…。テストマッチでまったく歯が立たなかったオランダ戦もワールドカップ同組に控える。彼のストーリーはまだまだ先まで続くのだと信じたい。


岡崎が20cmの高さのミスマッチをものともせず名古屋DF増川をきりきり舞いさせていたのに、もう一人の清水のスタメンFW長沢は何をしていたのだろう(下がってきてポスト役をこなしてはいたけど)、というのも彼自身のせいばかりではない。彼は前半で退いたが、岡崎ばかりをターゲットにして長沢の高さを活かすクロスボールは一本も入らなかったと思う。
後半、ヨンセンが入ると途端にクロスは増えた。ターゲットが二つになって名古屋DFが清水より早く疲弊していったのは目に明らかだった。


後半途中から右サイドに入った辻尾はよく走ったし、よく闘った。名古屋のウィークポイントでもある左サイド、三都主を守備に専念させる攻めをもっと早くから徹底すべきだった。
うやむやになってしまいそうだけど、今月初めにも対戦した相手に戦術は本当に徹底されていただろうか?


しかし、課題がはっきり見えたのも、良い試合をしたからには違いないのだ。



……云々と愛野駅から満員のJR車内で振り返っていたのだが、結局こんな自分の考えは‘彼’が来れば違ってくるのだと、心の底で願っているからだと気づく。彼と本田拓也がいれば、来年こそはの期待は今日の惜敗の悔しさを軽々と上回る。
実現の期待が大きすぎて‘彼’の清水移籍は自分の中ではほぼ決定していて。(同時にこれは、藤本と兵働もっとしっかりしろ!の裏返しなのだけど) 
でも例によって清水は移籍金が払えないらしいとも聞く… (鳩山総理のお母様に頼めば一億ぐらい、すぐ出してくれるんじゃないかな?) ま、元旦の新幹線代が浮いたからそのぐらい‘彼’獲得のために寄附してもいいんだけど。


そんなこんなで、でも楽しい一日だった。おかげで元旦はのんびりできるし…
来年はワールドカップイヤーということで岡崎の不在は想定済み。大前君の飛躍を願う。
なんだかんだで最後まで楽しませてくれる、やっぱりエスパルスが大好きだ!