ボブ・ディラン ライブ

【ボブ・ディラン BOB DYLAN AND HIS BAND JAPAN TOUR 2010 / 3月18日 ZEPP名古屋】


68歳の現在も「ネバーエンディング・ツアー」と銘打たれたライブを世界中で年100回以上も行っているボブ・ディラン。
九年ぶり六回目の日本公演は異例のライブハウス・ツアー。日替わりでセットリストが変わる東名阪ZEPPでの全14回!


     


19時のほぼ定刻どおりにライブが始まった。ステージセットの一番右側にセットされたキーボードを弾きながらディランが歌い始めた。
♪Everybody must get stoned〜 あ、これは、あれだ、あれ! …何だっけ? 予習不足がたたって曲名が出てこない。ニューオーリンズっぽいサウンドに乗りながら頭をひねる。そう、“ブロンド・オン・ブロンド”に入ってた。もうちょい…ザ・バンドとのライブのバージョンの方が好きだったこの曲。ロビー・ロバートソンのギター・ソロがいかしてた…‘Rainy Day Woman雨の日の女’だ! やっと思い出した頃には二曲目が始まっていた。


ディラン先生を見るのは二回目。トム・ペティのバンド、ハートブレイカーズを従えた1986年の武道館以来、二十四年ぶりになる。
あのときも原曲とはまるっきり違うアレンジの演奏に面喰らわされて、ぽかんと見ていた記憶がある。歌い出しやサビの歌詞で「これは?」と集中して耳を傾けて2コーラスめで確かめるという按配で、全然楽しめなかった。なんだかディラン先生にテストされてるような気分になったものだ。
それでも学生で自称ブルースマンだった当時は80点位はマーク出来たと思う。今日はいいとこ50点かな?
そんな覚悟もしていたんだけど、老齢の域に達するボブ・ディランを生で見られるのなら、「桂冠詩人でありフォークとロックをベッドインさせた男」に感謝の拍手を送れるのならと、仕事は早退して、\12,000のチケットを握りしめて名古屋に来たのだった。


近作“Together Through Life”、“Modern Times”からの曲に混じって‘激しい雨’‘北国の少女’‘追憶のハイウェイ61’‘やせっぽちのバラッド’も披露された。五十年になろうとするキャリアの中の、二十一世紀と二十世紀の曲が共存するステージ進行。
終始キーボードを弾きながら歌ったディラン。(今日はとうとう最後までギターを手にしなかったのが残念!) そのたたずまいはジャズ・コンボのバンマスみたいだった。気まぐれなブレイクのタイミングを見逃すまいとバンドのメンバーは皆ステージ右の彼の動きに絶えず集中している。ときどきb:トニーとdr:ジョージ・リセリが「まだかよ」みたいに苦笑を浮かべる。二人のギタリストは対照的で、チャーリー・セクストンはギターを取っ換え引っ換えしつつ奔放にプレイ、一方キンベルは左端から動かず、フェンダーで硬質なリズムを弾き続ける。
ディランをサポートしつつ、バンドは懐が深く、ジャグバンド的な高揚感のある演奏を聴かせてくれた。


     


アンコールでは噂どおり、そして自分も楽しみにしていた‘ライク・ア・ローリングストーン’がプレイされた。ステージが白い光で明るく照らされ、♪Once upon a time You dressed so fine〜とディランがしゃがれ声で歌い始めた瞬間に、ここにはもはやこの曲が書かれた60年代のスピリットなんてないことを痛感して(ホテル・カリフォルニア風…)、フロアの盛り上がりに同調することができかった。
そんなことはわかりきっていたはずなのに、このナンバーだけは錆びることはないという自分の思い込みを嘲笑われているような気分に襲われてステージを正視できなくなってしまった。
自分が生まれるよりも前、45年も前にアコースティックギターをエレキに持ちかえて「ユダ」と罵られた男はこの日、自らギターをかき鳴らすことをしないでその曲を歌っていた。
♪How does it feel? とディランに問いかけられる。How does it feel? とディランに問いかけてみる。


手短かなメンバー紹介以外にディランは一言もMCを喋らなかった。ハローもグッバイもなく彼はステージを去った。
今回はあのボブ・ディランをライブハウスでというだけで十分話題になったのだけど、でも彼の音楽はもともとドームや大アリーナで聴くものじゃない。本当は今日のZEPPより、もっともっと小さな小屋で聴くべきものだと思う。以前の優しい歌声は失われて悪声に磨きがかかった現在はなおさらだ。もう昔の曲なんて演らなくてもいいのにとも思う。
ショーが終わって、開演前とはずいぶん彼への期待が変わってしまっていたのが自分でも不思議だった。
これが最後かもしれないとも思っていたのだが、また数年したら平気な顔して来日しそうでもある。よく声も出ていたし元気そうだったけど、もっとよぼよぼに老いて枯れたディラン先生を見たいと今は思っている。



今日のコンサートは自分的には貴重なボブ・ディラン体験という以上のものではなかったけど、しかし、戦利品は豪華なのだ。
(ごく一部で)話題騒然、お宝必至の「ボブ・ディラン×チロルチョコ」をGET!
食うべきか食わざるべきか、それが問題。2セット買ったので1つは保存、1つはバラして友人たちにお土産に(ただし包み紙は回収する!)

     

それにTシャツも4枚買ってしまった!1枚だけ買うつもりがどれもデザインGOOD!で見ていたら全部欲しくなってしまって…