エスパルス9節/プレゼント

【5月01日 / Jリーグ第9節:清水 2−1 浦和 /‘プレゼント’】


会場でも繰り返しアナウンスがあったとおり、昨日のエコパの会場運営は不手際が目立った。
ふつうは(アウスタでも)指定席ゾーンへ入るには入口で係員がチケットを確認するのだが、この日のメインスタンド・ホーム側ではそれがなく、S・SS指定席の仕切りや案内が何もなかったために、早朝から並んでいたA席(自由席)チケットの人たちがそれと知らずに座ってしまっていて騒動に。結局その人たちは当日券のS席券を手渡されて移動したようだが、その後も係員を配置しないままだったために試合が始まるまで混乱が続いた。
いつもはコーナーポスト付近まであるAゾーン席が1ブロック削られて席割りされていたのがそもそもの原因のようで、自分たちもおかしいなとは思いながらゴールライン後ろの席に着いたのだった。スタジアム内メイン側では席種の案内の類は一つも掲示されておらず、初めて訪れた人はどこに自分の席があるのかわからなかっただろうし、一階がすでに満席状態なのに二階席に誘導するアナウンスもないままだった。
事態が発覚した後、人員が足りないのなら手書きでもいいから指定席の案内を一枚でも掲示していればあれほどの混乱にはならなかったと思うのだが、そんな融通を利かす余裕は現場スタッフにはなかったようだ。


自分たちは開場前の12時半頃に着いたのだが、エコパの周りにはすでに入場待ちの長蛇の列ができていて、どこに並べばいいのかわかりにくい状態になっていた。係員はハンドマイクも最後尾を示す案内板も持たずに声だけで誘導している。コーンを立てるなりロープを張るなりの目印は何もなく、チケットの前売り状況から推測できたはずの混雑への備えはあまりにお粗末だった。
好天に恵まれ、家族連れも多く、試合前はなごやかな雰囲気に包まれたエコパ・スタジアム。劇的な勝利を飾ったから良かったものの、そして温厚な静岡県人側のトラブルで治まったから良かったものの、とんだ失態を見せられた。


帰りのJR愛野駅の混雑もひどかった。ある程度は覚悟していただろう観戦帰りの客はまだしも、一般利用客にとってはさぞかしいい迷惑だったろう。自分らは下りだったからまだマシだったが、静岡・東京方面に帰る方々はさんざんな思いをしたのではないだろうか(特に小さい子供さんを連れた方々は)。駅の混雑を想定してシャトルバスの利用をうながす呼びかけもほとんど聞かなかった。
英国だったらオレンジと赤のグッズを身につけた者たちを一緒にしないよう徹底されるのはスタジアム内だけではない。
あれだけの群集が大挙してつめかけた駅周辺に警官・警備員は一人も配置されておらず、清水サポも浦和サポもごちゃ混ぜになりながらじっと我慢してもめごとの一つも起こらないのは、考えてみれば奇跡的なことのようにも思えた。


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さて、試合の方は一進一退の攻防が繰り広げられた好ゲーム。90分があっという間にすぎて、終了間際ロスタイム3分に決着がついたのだった。


あらためて浦和のスタメンを見てみると、たしかに良いメンバーだ。ただし、バックラインは…どうかな?


   


清水の2点は岡崎とヨンセン、今季初のアベックゴール。
開幕当初は新布陣へのフィット感がいまいちだったのに、それでもコンスタントに得点を重ねている岡崎。ボールの収まりどころとして、また守備面での貢献度も高いヨンセン。二人がそろって決めたのは昨年12月の天皇杯準々決勝・新潟戦以来。リーグ戦では7月の鹿島戦以来のことになる。
常々チームプレー優先を口にして自身のゴールにはこだわらない旨の発言をしているヨンセンだが、FWとしてゴール数が伸びないままならフラストレーションもたまるはず。それだけに昨日もハイボールのほとんどをマイボールにする献身的な90分を戦い抜いた彼に、最後の最後にボールが渡ったのは偶然ではない。
ロスタイム、最後のワンプレー。平岡が必死に喰らいついて残したボール。兵働がファーに上げたクロスは、チームとサポーターみんなの想いがこめられたヨンセンへのプレゼント・ボールだった…
「頼む、フローデ」「オーライ!」 そんなやり取りが緩く弧を描くボールから聞こえてくるようだった。しなやかに飛んで逆サイドネットに流しこんだヨンセンのショットはまた、われわれエスパルス・サポーターへの最高のプレゼントでもあった。


あの場面、ゴール前に浦和DFは4人しか残っていなかった。試合後の浦和・フィンケ監督はドローに持ちこめなかったことを落胆していたと記事に書いてあったが、それならばなぜ、直前のCKで帰陣していたエジミウソン♯17や高原♯19はさっさと自陣前を空けてしまったのだろう。ポンテ♯10と田中達也♯11は前線に残っていたように思う。清水はボスナーがゴール前に陣取って坪井♯2を引きつけていた。もう残り時間はない状況、浦和は守備に徹するという意志統一がされていなかったために数的不利を自ら招いて、最裏にヨンセンのノーマークを許したのだった。
逆の立場を想像してみる。清水はCKやセットプレーの守備機会にはヨンセンは必ず戻って、実際に彼がクリアすることが多い。そしてプレーが切れてチームが落ち着くまでは無闇に上がっていかない。FWの守備意識の違いが勝負を分けたともいえるが、誰もが口にするチームプレーが本当にそのとおり実践されているかどうかは、こういうギリギリの場面に表れるのだ。
もし浦和にDFリーダーとして闘莉王がいたなら、怒鳴りつけてでも攻撃陣を下がらせて全員守備を徹底していたのではないだろうか?
(清水にとって‘天敵’の一人山田暢久♯6が今季はその闘莉王のポジションに入ったために攻撃に絡んでこないのもラッキーだった)


前半17分、CKからの岡崎の先制ゴールも浦和守備陣の判断ミスだと思う。
ニアポストの岡崎のマークは鈴木啓太♯13だったが、ニアで点で合わせることにかけては職人的な巧さに磨きのかかる岡崎に彼ひとりというのでは、いかにも甘いではないか。
ゴール前のヨンセン、ボスナーの長身プレーヤーではなく、ニアのミスマッチを瞬時に読み取って低いボールを送った藤本の戦術眼も光る。
岡崎の胸トラップの上手さは小野に匹敵するものがあって、どんなに強く身体をぶつけられて体勢を崩しても、なおボールを抱えこんで失わない。あの体格でその強さは異様でもある。相手の的になりながら、逆に圧力をかけて押し返してしまう。その岡崎に対し、流れの中での対応能力ならひけをとらないとはいえ、啓太にセットプレーのヘディング勝負を負わせるのは酷というものだ。
90分の中の一瞬、点で勝つ。小野の加入と本田の成長で清水の線(パス)は多彩になったが、その中にあって一点を掠め取る岡崎の勝負強さは凄みを増している。このゴールは代表当確ゴールにもなったはずだ。


  


先制した直後の前半21分には、小野に今季最高の決定機が訪れた。ペナルティボックス中央でパスを受けた小野は軽やかなステップで坪井を左にかわすと(坪井は自慢の快足を飛ばして小野の前を通り過ぎた)、自ら作ったどフリーのスペースからゴール左上を狙った。
宣言したとおり、古巣レッズ・サポーターの目の前で最高に伸二らしい移籍後初ゴールが決まった!……と思わず立ち上がって叫びかけたが、、、外れたのだった。
なんとなく感じてしまうのだが、長い間ゴールから遠ざかっていると‘ゴール感’というか‘シュート感’みたいなものを身体が忘れてしまうのではないか? たとえ小野伸二でも。それは錆びつくとか劣化するということではなく、スランプということでもなく。本来攻撃的に才能を開花させてきた彼が、その万能型のセンスとテクニックから守備的な位置に起用されることが欧州でも続いて、いつしかシュートを決める感覚を鈍らせてしまっているのでは…? こんな言葉を使いたくはないが、言ってみれば「小野のテル化」が進行しているのではないか?
中盤の選手でも九試合もこなしていれば自然と得点機は来るもので、それは前節の兵働が証明していることでもある。好調なチームにあって、なぜ小野にだけゴールがないのだ。不思議でならない。
昨日のは「今季最も惜しかったシュート」として記憶しておくとして、もうこうなったらPKでもごっつぁんゴールでも何でもいいから彼に点を取らせてやってほしい。今度は小野にプレゼント・ボールを…


向こうが高原なら、こっちは永井さんだ!と健太監督が思ったかどうか知らないが、ある意味でダービーっぽい雰囲気もあって楽しく盛り上がった試合になった。
浦和サポの声に負けじと続けられたエスパルスの応援は♪フォッサも♪ビバもいつもよりかなりテンポが速かったね(笑)
とにかく、通算300勝おめでとう!!!


  


浦和との次の対戦は9月。そのときまで互いに上位をキープして再び好ゲームを見せてほしい。清水にとってはそのレッズ戦から名古屋、鹿島と続く赤いチームとの三連戦がリーグ後半の一つの山場になる。
エコパでは8/22にジュビロとのダービーがある。せっかくの好ゲームの楽しい思い出が台無しにならぬよう、次回は問題点をしっかり改善しての開催を強く望む。