エスパルス ナビスコ6節/初のダービー

日曜日に予定していた仕事を急に来週にしてくれとの電話があって「そうですねェ…ちょっと調整してみますが」とかなんとか、渋い返事をしながら〈しめしめ、これでダービーに行けるわい!〉頭の中ではチケットの算段を始めていて顔はニタニタしていた。


【6月06日 / ナビスコカップ予選第6節:清水 2−0 磐田 /‘初のダービー’】


とうとう中山までもいなくなってしまった今季静岡ダービー初戦。両チームのスタメンを見てもダービーを象徴する‘闘将’的存在は見あたらない。

今、コンサドーレ札幌のHPを初めてのぞいてみたら、選手ひとりひとりのプロフィールが見られるようになっていた。
中山のページを開くと― 尊敬する人「中山儀助 」(笑)、好きな言葉「龍驤虎視」(…?)、特技・資格「教師免許」…
そうだった、プロ発足期のこの世代は教員免許を持っている選手がけっこういたのだ。たしか堀池や大榎も持っていたはずだ。サッカーではなく勉強で慶応に入った反町も持っていると思う(健太はどうだっけ?先生ってタイプじゃないけど(笑 )
(現コンサドーレ監督は2004年途中から清水の指揮を執った石崎氏。翌05年から健太体制になった)


     


いろいろな意味でダービーの象徴的存在でもあったゴン中山不在の、初めてのダービー。敵ながら、彼がもうベンチにもいないというのはやはり寂しいものだ。
だが、初めての静岡ダービーを前に熱く血をたぎらせている男がいた……(かどうかはわからないが) ‘役者’ならここにいる。小野伸二にとって、これが静岡ダービーデビュー戦なのだ
後半20分のヒールで落として受けて一人かわして右45度(いわゆるデルピエロ・ゾーン)から軽くインフロントで狙った絶品ものの完璧なコントロールショットは5/1レッズ戦のシュートの上を行く「今年いちばん惜しいシュート」になった。
「いいよいいよ、来てるよ、近づいてるよ!」「いや、まだまだ。15センチずれてる」拍手しながら仲間たちと言い合った。


ポストに嫌われて天を仰いだ小野はどんな気持ちだったろう。「入らねーや」 こんな感じだろうか。エコパでのレッズ戦後の「あれが入らないならもう得れないかも」というコメントはあながち冗談に思えなくなってくる。
ただ、たとえ小野でも、今のままならそうそうゴールを決めることはできないのではないかと最近は感じている。そもそもシュートを撃ってないのだから。ストライカーとプレーメーカーの役割は違うけれど、ルーニーでさえ決定率は約2割。今日の小野はシュート2本。確率からいけば入らなくて当然のシュート数だ。


1本目のシュートは前半15分。ペナルティエリア中央で藤本のCKを左足ダイレクトボレーで狙った。体が開いてしまってミートしきれず、彼にしては珍しいミスキックになったが、これも小野ならではの芸当だった。
右横からのボールはふつう右足で撃つ。ましてやボレーなら。藤本が送ったボールはさほど強くなく、磐田DFのプレッシャーもなかった。ステップを整える時間も余裕もある状況で、なぜ彼は左足のシュートを選んだのか。磐田が自陣前を固めた中で右隅上にターゲットを絞ったのかもしれない。
ボールが到達するまでの一秒か二秒のあいだに、あの天才サッカー小僧の脳内にどんなひらめきが走り、どんなイメージが浮かんだのか、凡人には知る由もないが。


移籍後初ゴールはまたもおあずけになったが、彼には今日みたいなベストショットで初ゴールを飾ってほしいとの思いが強くある。こうなったらナビスコ天皇杯決勝か、リーグ終盤の大舞台までとっておいて、小野の初ゴールでエスパルス優勝!みたいなドラマでもいい。
……いや、さっさと一点得るべきだな、絶対。現実的にならなければ、クールにならなければ。
(俺が悩んでも仕方ないのだが)


今日、90分を通して際だったのは彼のボール奪取能力の高さ。相手がトラップした瞬間を狙って体をぶつけて体をこじ入れてマイボールにしてしまう(特筆すべきは、同じことをされても彼はロストしない)。今日ジウシーニョ♯8をいじめっ子のように完全につぶしたのは小野だが、それは守備意識からというより、ラインを上げかけた磐田に瞬時に優位に立つための攻撃センスゆえに、あえて彼を標的にしているように見えた。
残念ながらトップに当てたところでミスが多く、なかなかスピードに乗った攻撃が展開できなかったのは残念だったが。


     


本田も今日は安定していて、磐田ユース組や途中出場の成岡♯10に格の違いを見せつけた。
三浦ヤス、サントス、テルとファネンブルグドゥンガ、服部。静岡ダービーの歴史は両チームボランチの闘争史でもある。今日の様子だと、これから何年も本田が君臨しちゃいそうだけど、ジュビロ君はそれでいいのかな?
藤枝東高同級生の長谷部の成長を思うと成岡はどこか甘いのだろうなと思わざるをえない。監督が悪いってこともあるけど。ま、ヤマハのことはほっとこう。


最近のエスパルスの停滞ムードは、選手層は厚いはずなのにスタメンを固定しがちな健太采配もあって、レギュラーとサブが線引きされて今季開幕時の競争意識が薄まったことも要因にあると思う。
たとえば今日途中出場した真希、原、大前は短い時間の中でも(だからこそ)強引に自分の形に持ち込んでシュートしてこなければ、いつまでたってもスタメン入りできないことを肝に銘じなければならない。
これはたぶん、小野にゴールが生まれないことと、チームの得点力が落ちていることとも、根は同じだと思う。

ナビスコカップの予選突破は今週水曜日の他チームの結果次第だが、7月のリーグ再開に向けてオプションを増やさなければ、現在のムードは大きくは変わらないだろう。相手にとってマニュアルが一枚で足りる清水は対策の立てやすいチームのままだからだ。
選手の気迫とか技術の問題ばかりではない。監督のフレキシビリティこそがチームを活性化させる。一年を通してそれができる者が優勝監督になれるのだとすれば、ここまでの健太監督にはまだそれだけの余裕も大胆さも打ち出せていないのが最大の不安要素だ。


     


昨日の土曜日、インターハイ静岡大会決勝は静岡学園が清水商を破って、意外にも初の総体出場を決めた。
清商はまたも全国切符を逃した。それで伸二先輩と平岡先輩が奮発したというわけではないだろうけど、それでも小野は地元でダービーを戦えるのを心底楽しんでいるように見えた。
7/17のリーグ再開の初戦、それから一月後の8月にもダービーは組まれている。代表組が戻ってきても今の磐田は負ける相手ではないのは今日はっきりした。小野と本田拓也の好敵手が現れなければ清水の連勝は堅いだろう。
(勝った方が次の対戦までいばれるのはダービーの‘掟’。もちろんずぅーっといばらせてもらうつもりだ)


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いよいよ代表が南アフリカ入りした。
水曜日、岡崎に朗報が届けられますように…
彼の地で彼が躍動しますように…