エスパルス天皇杯2回戦 / 静岡県代表として…

【9月05日 / 天皇杯2回戦:清水 2−0 Honda FC /‘静岡県代表として’】



残暑厳しい中、今年の天皇杯が始まった。今日の二回戦からJクラブが登場。エスパルスアウスタ静岡県代表・Honda FCを迎えた。
今年もJFL上位をキープしているHonda FCは過去の天皇杯でも大物食いをやってのけ旋風を巻き起こしたことがあり、J1エスパルスとはいえ気の抜けない相手だ。 


     


ただ、ホンダはおととい9/3にFC岐阜SECONDとの一回戦を戦ったばかり。中1日という日程でJクラブとの対戦とは気の毒というほかない。天皇杯もそうだが、今季Jリーグのいびつな日程に関して言いたいことは山ほどあるが、それはまた別の機会に。


     


リーグ戦のまっただ中に別カテゴリのチームと対戦するのはやりにくいものだと思う。所属するリーグの相手のようなデータがなく、ほぼぶっつけ本番の勝負になる。心理的には下位リーグのクラブの方が有利で、それゆえジャイアント・キリングも起こりやすいのは天皇杯の醍醐味でもあるのだが。
過去の天皇杯初戦ではエスパルスも苦戦してきたが、今年はどうか。幸いにして浜松のHonda FCとは練習試合をこなす仲であって、強豪とはいえまったく未知の相手ではないのはかえって良かったかもしれない。(直近では6月に三保で対戦していて、そのときは負けている)


     


なによりYNC(ナビスコ杯)、天皇杯、代表戦絡みの今後の日程を考えれば、今日と来月の天皇杯次戦に起用されるメンバーの奮気は清水にとって重要不可欠になってくる。猛暑は続いているのに9月のリーグ戦はほとんどデーゲームに設定されている。日程の不利・無配慮があるとすれば、それを現実的に埋めるのはバックアッパーの一層の充実以外にない。


     
     

     

予想どおりにエスパルスは苦戦した。予想外に、中1日というのが信じられないほどに、Honda FCはのびのびと躍動した。
清水はFW枝村もMFに入った大前もキレていた。久しぶりに見た長沢もたくましさが増していた。なのに、チームとしては機能しなかった。これは今季サテライトが廃止されてレギュラー外の選手の調整の難しさを物語っているのだと思う。故障明けで試合勘が万全ではない選手も何人かいる中で、リーグの勢いを持ち込んだホンダの統率のとれた攻守に受けに回ってしまうのは仕方がないことかもしれない。


     
     


アップゾーンで青山と海人が心配そうにピッチを見つめていた。

バーを叩いた2本のシュートをはじめ、決定機の数でも圧倒された。おそらく試合を通して清水のパス成功率はホンダの半分ほどではないか。内容的に勝ちに価するのは、疑いようもなくHonda FCの方だった。


しかし、勝ったのはエスパルスだった。後半も三十分近くなって「もしかして延長?もしかしてPK戦?」の気配も漂い始めた矢先、さすがにホンダの足も止まりだしたところで投入された一樹の瞬発力が効いた。


     
     


貴重なゴールをあげる一樹も自分にとっては‘孝行息子’である。
(そういえば今日、Fトーの相手は駒澤大だ。きっと一樹の後輩たちがFトーを困らせていることだろう…)


そして、浩太! まだトップフォームには遠いことがはっきりしたが、それでもほぼ90分プレーできたのは何よりだった。体力的に限界を超えていたと思う後半も終わり近くになって、ゴール前まで自らボールを運んで最後にはそのまま相手DF・GKもろともゴールになだれこみそうな迫力を見せた。(今日のベストプレー&ベストショット! 連写しながら思わず「浩太、来いっ!」と叫んだためにピンが来てるのは1カットだけだった…)


     


このあと、浩太はしばらくゴール前にうずくまって立ち上がれなかった。本当にきつそうだった。


ヨンセンと比べてしまうと懐の深さの違いがどうしても目についてしまうのだが、最後にやっと…

     

…長沢がGKを破った。

     



終了間際に登場した木島は短い時間の中で、右サイドを破って中に切れ込んでシュートまで持っていった。


今日の勝利はけして小さな勝利ではない。児玉と永井、浩太の復調の兆し。大前と真希、枝村、長沢がフルタイムプレーした。苦しんで耐えて、タフに戦って勝ちにつなげた。もし先制を許せば、一挙に崩壊しかねない危うさもあったし、ここで切れるとナビスコとリーグへの影響だってはかりしれないものがあったと思う。そう考えるとスタンドの低調なムードとは裏腹に、実は今季のモチベーションを維持するためにも重大な試合だったのではないかと思えてくる。このメンバーでよくぞ踏ん張った、本当にそう思う。
けしてアマ相手にプロチームが不甲斐ない試合をしたとは思わない。そう考えることはHonda FCへの侮辱でもある。楽しくも美しくもない試合だったのは事実だが、激しく厳しくぶつかりあって、警告は両チーム通じて一枚だけだった。これは互いに相手をリスペクトしていた証拠だ。

勝ったから言うのではないが、Honda FCは好チームだった。静岡県代表にふさわしいチームだったし、このチームとここでフェアに戦えたことの意義は、きっと大きなものがあるだろう。このチームに勝ったのだから、エスパルスはこれから無様な試合はできないはずだ。Honda FCの健闘を讃えるためにも、静岡代表の名に恥じぬためにも。

今日のメンバー、真希・枝村・浩太・駿らユース組を含めて‘弟分’が希望をつないだ。さあ、今度は兄貴たちの番だ。