仲井戸“CHABO”麗市 ライブ GO!!60 TOUR


【 GO!!60 TOUR 仲井戸“CHABO”麗市(Vo, G)with 早川岳晴(Bass) at 清水JAMJAMJAM / 10月3日】



10/9に還暦を迎える(!)チャボがその日のファイナルに向けた全60本のライブツアーを敢行! 今日の清水で実に58本を数えるのだから、ほとんどセミファイナル。残すは大阪と渋谷AXの2DAYSのみとなった。
17:00STARTだから三時間ぐらいかなと思っていたら、サプライズゲストの飛び入りもあって、なんと四時間弱のライブになった。


          


まずはドブロを抱えてチャボが一人で登場。挨拶代わり、指慣らしに‘YOU GOTTA MOVE’(ストーンズver.)のスライドをブルージーに決めると‘Born in 新宿’へ。
三曲目‘ギブソン’から早川氏が5弦ベースで加わって「二人でロック出来るんだぜ!」 最後までハートフルな演奏が繰り広げられた。


ギター&ベースということで、アコースティックなアンプラグド的なライブかと思っていたが、全然フォークっぽさはない。楽曲はバラエティ豊かでアレンジにも凝っていて、ギタリスト・チャボとベーシスト・早川の見せ場もてんこ盛り。ドラマーがいないだけで、ノリは完全にバンドスタイルだった。


チャボはさすがにやつれているように見えた。もともと線が細い人なのに、さらに頬の肉が落ち、皮膚が薄くなったように見える。
だけど、演奏している姿は本当に楽しそうだったし、ロッカーらしいポーズを随所に決めつつ自信に満ちた充実のプレイを聴かせてくれた。昨日は名古屋、その前は豊橋でのライブをこなしてきていて、声は少し掠れ気味だったけど、逆にそれがヴォーカルに野太い迫力を増していた。
(本当は自分は9/30の豊橋に行くつもりだったんだけど仕事で泣く泣く断念。今日は開場二時間前に清水に乗りこんで当日券を一番にゲットしたのだった)


たとえば、ちょうど一年前、一回限りのあの“I STAND ALONE”のヴォーカルに比べると、まったく声量が違う。あの痛々しいライブ盤で聴けるのとは、声の艶も張りも違う。加えて、ギターも絶好調。チャボってこんなに表情豊かなギターを弾いたっけ?こんなことを言うと怒られそうだが、素直に「上手いもんだなぁ」と感心してしまった。
ツアー途中に早川氏の大ケガというアクシデントに見舞われながらも、ここまで続けてこられた喜びがサウンド全面に表れているようだった。一曲終わるごとに笑顔で拳を合わせあう二人。彼らのミュージシャンシップが最大限に発揮された音楽的にもクオリティの高いライブだった。


          


もうすっかりツアー慣れしている様子は気ままなMCの楽しさにも表れていた。まるで泉谷ライブみたいに友だちノリで声をかけてくるうるさい客を適当にあしらって(笑)、客席を煽って沸かせながらも(「もっと金子マリになれ!」)締めるべきところはきちっと締める大人のショーマンの余裕も漂わせていた。……ま、キャリア四十年なんだから当然なんだけど、チャボに限っては難儀なことにちがいないのだ。なにしろ昔は世の中を見たくないとマジックでまっ黒く塗りつぶしたサングラスをかけてステージに上がっていた男なのだから。


だから今日はツアー終盤のおいしいところがたっぷり味わえたライブだったのだと思う。コンビの成熟と演奏の進化。そこから生まれた自信、余裕。ラストスパートの意気込み。チャボのプロ意識と不変なギタリストの美学。早川氏の上機嫌とウッドベース。アーティストに失礼なところも多々あるが反応は素直な清水の客(「ミチコ、こっちの方がよく見えるぞっ!」…笑)。いろいろな条件が良い具合に整ってリラックスした空間になっていたし、チャボも早川さんも自然に演奏に集中できたのではないだろうか。


本篇の終盤にはRCナンバーが二曲演奏された。‘毎日がブランニューデイ’と「日本のミディアムテンポのR&Bの最高傑作」‘君が僕を知ってる’
このツアーでRCの曲をやることに迷いがあったこと、そして、未だに実感がないという清志郎のこと。チャボはありのままに話してくれた。この二曲での彼のヴォーカルは絶品だった。一年前には清志郎の歌声をなぞるかのような歌い方だったのに、今日はチャボが自分の声で堂々と力強く、まるで自分のオリジナルのように歌ってみせた。それだけで充分だった。だからチャボが語ったことは書かないでおく。
もうこれからのチャボは自分で曲を書いて自分で歌っていくしかない。それはきっと、誰でもそうなるのだ。胸を張って、自身のソウルを極めていくだけだ。


それから‘夏の口笛’‘My R&R’と続いてちょっとしんみりしたムードのまま終了したのだが…
アンコールにサプライズがあった。ステージからチャボが呼ぶ―「ソウル・シスター、Leyona!」 客席後部からLeyonaが登場して‘いいことばかりはありゃしない’(本ツアー初とのこと)、続けて‘雨上がりの夜空に’がプレイされたのだった。
興奮醒めやらぬ中、リリカルな‘ガルシアの風’と‘ホーボーズ・ララバイ’で熱演また熱演のステージは幕を閉じた。


          
         〈このシャツとタオルには汗と、涙もたっぷりしみこんでいる…〉


これまでの58回、たぶん毎回チャボはステージで清志郎のことを語り、歌ってきた。はじめはきっと勇気のいることだっただろう。だけど、オーディエンスの前で繰り返し語り続けることで自然に受け入れられるようになったことだって、絶対にあるだろう。
べつにRCナンバーがなくたって、今日のステージは文句なく素晴らしかった。再びフロントに立ってロックンロールする決意と情熱が見事、円熟にまで昇華されていたと思う。


なにより、かっこ良かったぞ、チャボ!
ジョージ・ハリスンとキース・リチャード以来の伝統的英国ロック・ギタリストのたたずまいは健在。「リッチになればなるほどブルースが上手く弾けるようになる」と言ったのはジミ・ヘンドリクスだけど、リッチかどうかは知らないが、スライドもフィンガーピックも冴えていたし、フレットの上を走る指さばきを見ているだけでも愉しかった。陰影に富む枯れた味わいのヴォーカルも、さすらう詞の世界も、全部ひっくるめてチャボという一人の男の、ブルースマンの魅力全開の夜だった。


あれだけのパフォーマンスを毎回やっていたら、さぞかし消耗することだろう。ラスト二回。ツアーが終わったら、ゆっくり身体を休めてほしい。そして、また会える日を楽しみにしている。 ブラボー、そしてサンキュー、チャボ!


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自分は後期RCより泉谷のバンドLOSERでのチャボが好きだった。泉谷の横に立つと彼のセクシーさがより
すでにRCが活動停止状態だった1988年、‘要注意人物’泉谷しげるの熱烈な(=迷惑な)ラブコールに応えて(=脅され、拉致されて)共犯者として“吠えるバラッド”のレコーディング〜HOWLING LIVEに参加した。
仲井戸、奔放な轟音ギターの下山淳(exルースターズ)、吉田建、村上ポンタと強者四人の最強バンドがわがままな暴君・泉谷をがっちりとサポートした。
アルバムのリードトラックにしてハウリン・ライブのオープニングがこの‘長い友との始まりに’(この時期の泉谷は今見てもやっぱりスゴイし、こんなバンドに出会うことなんてもうないだろう。名作・名演の時代はここで終わったのかもしれない)
戦友でもある主犯・泉谷に寄りそってクールなソロを弾くチャボの雄姿にまたも感涙。。。たしか泉谷が40歳だったから、チャボが38か9のときだ。


          


あれから二十二年が過ぎた。
二十年以上も前に好きだったギタリストが今日、ほんの10メートルも離れていない小さなステージで、今も変わらず好きだと思わせるギターを弾いていた。こんなこと、初めてRCサクセションを聴いた十代の頃には思いもしなかったよな。チャボだって、こんな未来を想像していただろうか。