エスパルス天皇杯準決勝 / 験かつぎとWE LOVE YOU


一年前の同じ日。同じエコパでの名古屋との準決勝。バーを叩いたボールが海人の背中に当たってゴールラインを越えたあの日から丸一年。
苦しんだホンダFCとの一戦で始まった天皇杯。今年も今日までサバイブしてきた。水戸ホーリーホック横浜Fマリノスモンテディオ山形。途中で切れてもおかしくなかったのに、よくここまでつないできた。あとは、手繰りよせろ!



【 12月29日 / 天皇杯準決勝:清水 3-0 G大阪 / ‘験かつぎ’】



     


この前の山形戦。今年一度も袖を通してなかったヴィンテージ・ユニを着て行って勝ったので、今日もそれを着ていく。ソックスも十八年物のオレンジ色のだ。足下が冷えるので靴下を二枚履こうかと思ったけどスニーカーがきつくなるのでやめた。
エコパのバックスタンドに座る。日射しは眩しいのに、雲の塊りが走る走る。メイン側からこちらに向かって次々と大きな影が飛びすぎてピッチが明るくなったり暗くなったりしているのが、いかにも大詰めが迫った師走っぽい光景だった。
スタンド通路でヨンセンに贈るバナーへの寄せ書きを募っていたので自分も書かせてもらった。「結婚したいぐらい大好きだ!」と書きたかったけど、こらえて、気持ちをこめて、ただ「WE LOVE YOU,Frode!!」とだけ書いてきた。


     


12/4のリーグ最終戦。西部が腰を強打するアクシデントがあったとはいえ、完敗を喫した相手との再戦。一月も経っていないのに今日の両チームにそのゲームのイメージは欠片もなかった。あの試合はルーカスに鬼の如くボールを収められて清水にはなす術がなかったが、今日の彼にその怖さはなかった。遠藤不在でボランチに位置していたとはいえ橋本はほとんど存在していないかのようだった。
エスパルスが早めの仕掛けと早めのフィニッシュで立ち上がりから優位に立つ。それは対ガンバというよりも主導権を握りながら手詰まり感のあった山形戦からの反省のように見えた。
小野がいつになく盛んにトップに走ってガンバDFラインを押し下げる。前半、彼がラインぎりぎりに飛び出してDF三人の中に放り込んだボールに岡崎が(久しぶりに)ダイビングヘッドした場面があった。シュートは惜しくもわずかに外れたが、クロスに点で合わせるシンプルな威力がガンバDFに与えた脅威は大きかった。前半早い時間帯に前に圧力をかけて刃をちらつかせたことが相手DFをびびらせた。それが伏線にあったからヨンセンがあれだけフリーになれたのだろう。
藤本があっさり右を破ってコントロールした緩いボールを送るとそこにヨンセンが飛び込む。大一番で二度までも同じ形で失点させてエスパルスがガンバから王者の資格を剥奪した。


     
     
     
     

後半、3-0と突き放す。カウンターが巧いチームなら、今日の展開ならとどめの四点目、五点目を確実に奪っていたとも思う。今季攻撃志向を高めたエスパルスだが、リアクション型ではないことがこの結果に表れている。
やっとテルに出番が訪れた。今になって市川のパフォーマンスが上がっているのは頼もしいかぎりだが、複雑な気分だ。あと一試合だけだなんて、そんなの絶対もったいない!
淳吾と本田も好調をキープしている。目を細めて彼らを見ているのは清水関係者だけではないらしいが、確かにそれだけの仕事をしてみせている。
そして大車輪の兵働。終了間際に傷んで交代してしまい勝ちロコの列にも彼の姿はなかった… 大丈夫だろうか?


     
     


帰宅して着替えていると、どういうわけだか左足だけオレンジソックスの下に黒い靴下を履いていた。寒いしいろいろボケてきてるのはわかっている。元旦もこれで行けばいいんだろ?国立のアウェー側(日陰の方)では今まで良縁がない。自分に出来るのはせいぜい靴下を片方だけ二枚重ねることぐらいだ。

決勝は残っているけど先に書いておこう。
なんだかんだと心配させながら、今年も年末最後まで楽しませてくれて、本当に本当にありがとう、エスパルス

クラブの経営規模の差をこれでもかと、かつてないほど思い知らされている今オフ。一歩踏み誤れば空中分解してもおかしくなかったのに、決勝まで昇りつめたこのチームを誇りに思う。ここまでつなぎ止めて引っぱってきた長谷川健太の努力は尊敬に価する。だから胸を張って、国立に行く。‘我が心の代表’のために「君が代」を歌う。あとは任せる。選手は「監督を男にする」とか「サポーターのために」なんて言わないで「自分が男になる」べく戦えばいい。勝とうが負けようが、その先に待っているのはいくつもの別れだ。健太エスパルスのラストマッチまであと二日。カウントダウンが始まってしまった……