エスパルス30節 / 清水のために、日本のために


      

パルちゃんズも楽しみにしていたこの日がやっと来た。テル・イチとの再会だ!


残留争いのただ中にいる相手。ゴトビ監督の言葉を借りるなら、甲府は「人生を賭けた闘い」を仕掛けてくるはずだった。しかし、スタンドから見ているかぎり、今日の甲府には清水が戦前警戒していたほどの圧力は感じられなかった。
最大のストロングポイント=ハーフナー・マイクを活かそうとはしていた。だけど、そのポイントがズレているように見えた。



【 10月23日 / Jリーグ第30節:清水 3−0 甲府 / ‘死にものぐるい、清水のために、日本のために’ 】



     

代表初スタメンのタジキスタン戦で2ゴール。高さのミスマッチからヘディングで決めた二得点で一躍全国にその名を知らしめたハーフナーだが、実は彼は「高さ」だけの男ではない。長身は長身だが、高さよりは長いリーチと頑健な肉体を駆使してしぶとくシュートまでもっていけるところに彼の良さはあると思っている。案外、泥臭いゴールの多い印象が自分にはある。
だが、メディアは194cmの高さばかりを強調する。W杯予選での華々しい活躍に、チームメイトもそれまでとは違うイメージを持ってしまったのかもしれない。マイクのところにハイボールを入れれば何とかなる、みたいな。その工夫のなさ、精度の意識の低さが‘死にものぐるい’のはずの甲府の戦術にブレを招いたのではないか。


     

試合終了後、マイクの白いユニフォームは、汗に濡れてはいたが、さほど汚れてはいなかった。対する清水のトップ、復帰二戦目でフル出場を果たした高原のユニフォームはどうだったか。
ゴールこそならなかったが決定機を何度かつくり、90分間、甲府DFと競り合いながら必死にボールを収め続けた。互いにハードマークされた高原とマイクの両エースだったが、自分からボールを呼びこもうとして倒された回数は高原の方がずっと多かった。この元代表と現代表FWのシャツの汚れ具合の違いが、スコアに如実に表れたのだと思う。
今日の試合に甲府は敗れた。しかし、ハーフナー・マイクにとっては生きた勉強の場となっただろう。同じポジションの偉大な先輩FWの仕事ぶりを間近に見つめることができたのだから。


両チーム通じて最初のビッグチャンスは前半9分の甲府伊東輝悦インターセプトからハーフナーにパスしてすかさずゴール前まで走りこんだ。マイクはシュートを撃てたのに伊東へのリターンを選択してカットされた。ハーフナーの談話:「遠慮した。(伊東)テルさんに点を取ってもらいたかったから」
そんな…… 気を遣っていただき、どうもすみません! うちのテル坊がお世話になっております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします! …ハーフナー・マイクはいいヤツなのだ。


     

様々な人間模様が交錯したこの試合。甲府の27番と25番をついつい探してしまい、清水のプレーだけに集中して見てはいられなかった。
初めて敵として見たテルと市川。テルは隙あらば得点もの意欲的にランニングし、憎らしいほど冷静にパスをつないでいた。後半登場したイチはコンディションも良さそうで渾身の好クロスを連発、久しぶりに見るその軌道の美しさに惚れ惚れとさせられ、あらためて舌を巻いたのだった。

     



前半こんな場面があった。清水ゴール前で強引にボレーに行って平岡の頭部を蹴った内山にボスナーが激昂。清水の選手たちが取り囲んだ。甲府側はキャプテンも誰も来ないので、四面楚歌の内山が可哀想だなと思って見ていると…

     

テル先輩!!!

     



チーム最多のシュートを撃ちまくりながら、これまでわずか1得点の高木クンがテルを外して得意な形から、やっと決めてくれた。

     


小野はこのゴールとMOMでポッキー1年4ヶ月分を荒稼ぎ(笑)

     


大前が決めた3点目はのらりくらりとユングベリが空けたスペースによって生まれた。最後は相手GK、DFともつれながらのシュートになったが、もう一本、横の高原にパスが渡っていれば、もっと美しい完璧なゴールになっただろう。

     



大悟の離脱、ヨンアピンの出場停止はあったものの、いつのまにか役者がそろってきた感がある(無用な警告が多いのは気になるが)。 …というか、レジェンドそろい踏みじゃん!と気づいたのは小野もテルも退いたあとだったという…
甲府つながりで言えば、来季加入の山梨学院高・白崎クンは今年の高校サッカー界最大のタレントでモンスター級なのだとか。エスパルスは順位をめぐる熾烈な争いの渦中にいるわけではないが、来年に向けプロ選手としての個人の戦いは厳しさを増している。確実に何名かは押し出される。‘死にものぐるい’の覚悟はエスパルスの選手にも必要なのだ。


甲府には残留してほしい。ちょっと失礼な言い方になるけど、エスパルスにとってヴァンフォーレ甲府はビジネス的にも‘良客’なのだから。アウェーであれだけの動員をしてくれて、遠征移動距離も短い「お隣さん」は貴重な存在だ(同じことは甲府にも言えるはず)。
リーグは残り四戦。得点王・代表エース候補を抱えながら降格するな。テルとイチ、清水のためにも甲府を残留させてくれ! ガンバレ甲府