エスパルス2012:第6節 / 内なるダービー


‘史上最大のダービー’が近づいている。4/30、イングランド・プレミアリーグ第36節、マンチェスター・ユナイテッドVSマンチェスター・シティ。
33節を終えた現在、首位ユナイテッドを勝ち点差5でシティが追う。今季第6節、オールド・トラフォードでの対戦では6−1の衝撃的スコアでシティが圧勝し、その後、独走態勢に入ってずっと首位を守っていたのだが……、あぁ、やっぱり、の展開になっている。
失速したとはいえ、シティはここまでホーム無敗を継続中。優勝を占う決戦はシティのホームだ。そして、ここに来てテベスが復帰! キーマンは‘元ユナイテッド’の彼になるかもしれない。



【 4月14日 / Jリーグ第6節 :清水 3-2 磐田 / ‘内なるダービー’ 】



さて、日本の、静岡の、41回目のダービー。互いにチームの‘顔’が入れ替わって若返りつつある近年、かつての熱っぽい雰囲気は失われていたのだが、今年はちょっと様相がちがう。エスパルスジュビロともに有望な若手が台頭して、新章の幕開けを予感させる。
「磐田にだけは」「清水にだけは」という大スローガンよりも、もっと直接的な選手間のライバル心が火花を散らしそう。藤枝東高出身の一年先輩と後輩。五輪メンバー入りを懸けた競争。ジュビロの元エースと現エースFW、それに新エースFW。二年前の大学No.1ボランチと昨年の大学No.1ボランチ。それに韓国人選手同士のマッチアップも興味深い。要するに、「こいつにだけは負けられない」互いをよく知る好敵手の存在が、これからの静岡ダービーをダービーたらしめるのではないか。


それら‘見所満載’の想像は今日の段階ではちょっと先走りしすぎていたかもしれない。清水・河井はベンチスタート。先制を許した前半途中に右サイドバックとして登場し、終了間際に高木に好クロスを送り同点弾をアシストした。
二年目にしてキャプテンマークを巻く磐田・山田は主に右サイドでプレー。後輩の村松・河井と絡む場面が少なかったのは残念。個人的には彼は左でプレーした方が相手にとって脅威だと思うのだが。
12分、駒野のCKからの失点は、明らかに高さのミスマッチを突かれた。


     

     


後半直前、ブレーキにすら見えた大前に小野が念入りにアドバイスしていた。

     

そして開始すぐ、大前は高木のクロスに飛びこんで待望の今季初ゴール! さらにドリブルで切りこんで追加点も奪った。

     
     
     

大前は内面でもダービーを戦っていた。二ケタ得点を公言しながら開幕五戦で無得点。昨年は差を見せつけた逆サイドの同僚にリードされている焦り。それに今日前半の不甲斐ないプレー。試合序盤にノレなければ、たいていはそのリズムを変えられないまま終わってしまいがちだが、今日の大前は前半の不出来を払拭する集中力、気迫を発揮した。
磐田DF相手というより自分の中の自分と戦って、意地のゴールをもぎ取ったように見えた。大前が前半の停滞を後半は解消してエスパルスは勝った。大前のプレーは今のエスパルスバロメーターでもある。


サイドからの長いピンポイントクロスに(長身センターFWではなく)逆サイドの小柄なFWが頭で合わせるというのは、たぶん練習している形ではない。‘ひらめき’に頼るのでは強さとは言えない。それでも、ウィングがサイドラインに張りついたままでは敵DFラインにギャップは生まれないのだから、今日の後半のように大前と高木はもっと流動的に動くべきだと思う。同じような形から二失点した磐田DFが甘かったということでもある。
十分程度の短い時間ながら、高原はFWらしい存在感を見せてくれた。彼が戻ってセンターラインがしっかりすれば、大前のゴールはもっと増えるだろう。

     

     

今日のエスパルスの勝利は、自分には、タフなチャレンジを続けた村松の勝利のようにも思えた。マニュアルやセオリーのない、肉体と同時に頭も一秒たりとも休まずフル回転させねば務まらないあのポジションで、ここまで手探りでやってきたことが正しい方向にあるのだとの確信を深めたのではないか。(たとえば本田拓也にはテルという生きたお手本が、テルにはサントスや三浦ヤスという手本があったのに、彼にはそれがなかったのだから)
絶えず厳しく自分を高いレベルに修整しながらプレーする。自分の中に自分とのダービーを生んで挑み続ける。それがチームに連動して結果につながる。大前と村松のスピリットにダービーマッチに勝利するメンタルが如実に表れた試合だった。そう、清水と磐田が戦うだけではダービーではないのである。自らのダービーを戦い続ける者がピッチに集って、はじめてダービーになるのである。
磐田に勝ったということ以上に、一つの試合の中で悪い流れをコントロールして形勢逆転できたことは、若いチームにとって貴重な経験になったのではないかと思う。

     
     

ジェジンが見ている前で勝てて良かった!