W・フロイント/オオカミと生きる

全オオカミ族必読の書!!

廃刊になった月刊PLAYBOYの最終号を探して古本屋めぐりをした先月、偶然見つけてしまった。ここ二、三年アマゾンのカートに入れっぱなしで保留にしたままだった本だ。あぁこのカバー写真‥‥オレも吠えたいっ!こんなところで出会うなんてな、しかも400円て…
大事にそっと抱えてレジに進むオレの血がふつふつとたぎっていたのは先に手に取っていたスカーレット・ヨハンソン表紙のPB「世界で最もセクシーな美女100人」特集号(2006.12)のせいではない。(最終号はなかったので今も探し中)


【ヴェルナー・フロイント/オオカミと生きる(300P)/白水社・1991年(090222-0306)】
監修:日高敏隆 訳:今泉みね子

西ドイツ国防軍での勤務のかたわら未開地探検を続けていた著者がオオカミの魅力につかれて生涯を捧げる決意をする。念願がかなって1977年ザールラント州メルツィヒ市の囲い地で実現したオオカミとの共同生活。以後十五年に渡って続けられてきた三種五群のオオカミたちの観察記。写真多数。


       


ひさしぶりのオオカミ本。必読とはいったものの、オオカミ族の自分には知っていることばかりだったので内容的には惹かれるところは少なかったのだが。
著者のフロイント氏は動物学者でも研究家でもないので特にオオカミの生態についてデータを集めたり、生活の中で実験をするわけでもないのだ。ただ、研究目的では実践不可能な、野生状態の群れに混じってじゃれ合い、エサを食い、一緒に眠るということを、やってのける。日本で言えばムツゴロウさんの動物王国みたいな感じか?とも思うが、相手は人間への服従を遺伝子的に刷り込まれているイヌではなく、オオカミなのだ。(イヌとオオカミの決定的な違いについても本文で言及されている)


生後間もないうちに自分の手で授乳し、数週したら直接口移しで肉を与える。じきに群れ(兄弟)の中で順位意識が芽生えてくるオオカミと共に生活していくには、赤ん坊のうちに彼が「超位オオカミ」であることを刷り込んでおく必要があるのだという。それをしないで、ある程度成長した段階から人間が育てようとしても、絶対にオオカミはなつかない。それは数千年も前からの人とオオカミの関わりのあいだに人間が彼らを追い込んだ結果、あるいは彼らが彼らなりに発達させた知恵でもあるのだ。

 年長のオオカミは子オオカミを人間に敵意を持つように、人間の前から姿を隠すように育てざるを得なくなった。
 オオカミの親は一度自分が消化した肉を生後三週間以後の子供に食べさせる。オオカミは大きな獲物を遠くまで運ぶことができないので、種を維持するために、前もって消化した肉を胃の中に保存しておく術を発達させた。成長期の若オオカミは膨大な量の食物を必要とする。だから、群れの他のメンバーも母親と同じようにして肉を持ってきてやる。


         


オオカミの群れでの順位は厳格で、リーダーである「アルファオオカミ」が常に一番先にエサを食べ、涼しい場所で眠り、優位に行動できる。その争いは目も開いていない時期に母乳をめぐって兄弟を押し出そうとするところから始まっているが、必ずしも体力のある強い個体がアルファの地位に君臨し続けるとは限らない。生まれつき盲目だったオオカミや一番若く小さい雌オオカミが、激しい闘いを挑んでその地位を奪取した例も紹介される。
超位オオカミであるフロイント氏もその座が安泰というわけではなく、特に発情期の群れに入るのは危険も多いのだが、オオカミとしての長い経験から、その兆候を感知し排撃する勇気を彼は具えている。

 ジークフリートはその強い性格のために群れ内で際立っており、生後七ヶ月になると私さえも獲物から押し退けようとした。
 (中略)
 私はジークフリートの前に行き、こぶしで口の下に一発お見舞いした。すぐに彼は地面にペタリと横たわり、くんくん鳴いて服従を示した。


なんというか、オオカミの生態の記録というよりは、これを実現するための人間の苦労ぶりが面白い、というのが本音である。神がつかわした生き物としてのオオカミの神秘のベールを手荒に引き剥ぐものではないかという懸念も読む前には少しあったのだが、これなら許せる。
それよりも何よりも、多数掲載されている写真がすべてを物語っている。…で、でかいじゃん、ここのオオカミどもは!べつに怖くはないんだけどさぁ〜‥ なーにオオカミたちとくんずほぐれつやってんだよオレも混じりてーーッ! あと、目をむいてほ乳びんにむしゃぶりついてミルク飲んでるチビオオカミ可愛ぃーい!
子供〜若オオカミの観察がメインで必然的にいかに群れに関わり続けられるかに重点が置かれているので、狩りにおけるオオカミの賢さやチームワークの良さまでは言及されないのが残念といえば残念だが、仕方ないか。

ヨーロッパオオカミとホッキョクオオカミの違いや、オオカミとイヌの子供を一緒に育ててみたことなどもオオカミ族としては興味深く読んだ。
ホッキョクオオカミの白いふかふかの毛皮、うらやましいぞ!(我々の祖先はダークな毛並みのヨーロッパオオカミ) そういえば狼王ロボの連れ合いブランカも、ほとんど白に近いゴージャスな毛をまとっていたっけ。

読み物としてはともかく、書棚にあると嬉しい、オオカミ本フェチを満たしてくれる一冊。