読書

上遠恵子 / レイチェル・カーソン いまに生きる言葉

【 上遠恵子 / レイチェル・カーソン いまに生きる言葉 / 翔泳社(170P)・2014年7月(140829−831) 】 ・内容 いまだに根強い人気を誇るレイチェル・カーソンの思想と生涯を、あまり知られていない側面に光を当て、当時の写真や彼女がつむいだ言葉とともに紐…

立松和平 / 毒 風聞・田中正造

【 立松和平 / 毒 風聞・田中正造 / 東京書籍(313P)・1997年(140824−827) 】 ・内容 足尾銅山の鉱毒によって破壊された谷中村。その被害に真正面に対峙した田中正造― 渡良瀬川に棲むナマズやカエル等、小動物の目を通して重層的に描く〈闇〉の日本。立松…

レイ・ブラッドベリ / 華氏451度[新訳版]

再読の流れでもう一冊。 自分的に「再読」というと、まっ先に思い浮かぶのは『高慢と偏見』である。しばらく離れているつもりだったのに、困ったことにまた新訳が出た。小山太一による『自負と偏見』(新潮文庫)である。 特に目当てがあるわけではなくふら…

J・ティプトリー・ジュニア / たったひとつの冴えたやりかた

『アルジャーノン』が空振りだったのでリベンジの再読。切り札の一冊にご登場を願った。 【 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア / たったひとつの冴えたやりかた / ハヤカワ文庫SF(387P)・1987年 (140816−818) 】The Starry Rift by James Tiptree Jr. 19…

ダニエル・キイス / アルジャーノンに花束を

ダニエル・キイス氏が亡くなったので、‘夏の課題図書’として約二十年ぶりに再読したのだが…… 【 ダニエル・キイス / アルジャーノンに花束を / 早川書房 ダニエル・キイス文庫(485P)・1999年 (140812−816) 】FLOWERS FOR ALGERNON by Daniel Keyes 1959 …

片岡たまき / あの頃、忌野清志郎と

【 片岡たまき / あの頃、忌野清志郎と ボスと私の40年 / 宝島社(255P)・2014年7月 (140812−813) 】 ・内容 ド派手メイクに隠されたロックスターの素顔とは?一人の熱狂的ファンが衣裳係としてツアーへ同行するに至るまで。清志郎が『COVERS』、タイマー…

ジョー・ウォルトン / 図書室の魔法

ブログを休んでいた期間に読んだ本の一部だけメモ。 ・W.ムーア「解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯」(河出文庫)は皆川博子「開かせていただき」「アルモニカ」の元ネタとなった、18世紀英国に実在した人類史上初の解剖医の人物伝にして奇怪痛快な怪作。…

梅田明宏 / 礎・清水FCと堀田哲爾が刻んだ日本サッカー五〇年史

先月下旬、最寄りの図書館の新入荷コーナーにあったのを見つけてすぐ借りてきた。清水FCの歴代選手名簿も付録されていたので手もとに置いておきたくなり、結局買ってしまった。4300円。値段だけの価値あり。 【 梅田明宏 / 礎・清水FCと堀田哲爾が刻んだ日…

山尾悠子 / ラピスラズリ

実家で過ごす夏休み。朝遅く起きて入道雲を眺めていると、目の端でちょろちょろ動くものがあった。サンダルをつっかけて庭に出てみると…… おっ!? ニホントカゲの子ども(幼体)だった。どんな天の配剤によるものか、金黒ストライプのメタリックボディに鮮や…

松本博文 / ルポ 電王戦

【 松本博文 / ルポ 電王戦 人間vs.コンピュータの真実 / NHK出版新書(256P)・2014年6月 】 ・内容 プロ将棋棋士とコンピュータが真剣勝負を繰り広げる電王戦シリーズ。今年おこなわれた第3回大会は、プロ棋士側の1勝4敗に終わった。かつてはルールすら守…

宮下奈都 / はじめからその話をすればよかった

【 宮下奈都 / はじめからその話をすればよかった / 実業之日本社 (320P) ・ 2013年10月 (131023-1027) 】 ・内容 単独の著書として10冊目にあたり、『終わらない歌』以来1年ぶりとなる本書は、著者初のエッセイ集。小説を書く理由、自著の創作秘話、三人…

石牟礼道子 / あやとりの記

今月はじめ、水銀による健康被害や環境汚染の防止を目的に熊本県水俣市で開かれた「水俣条約外交会議」。世界から約140の国と地域の代表が集った開会式に寄せたビデオメッセージで安倍首相は 「水銀による被害と、その克服を経た我々だからこそ、世界から水…

岩城けい / さようなら、オレンジ

【 岩城けい / さようなら、オレンジ / 筑摩書房 (176P) ・ 2013年 8月 (131011-1014) 】 ・内容 オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の息子を育てている。母語の読み書きすらままならない彼…

レイ・ブラッドベリ / 黒いカーニバル

【 レイ・ブラッドベリ / 黒いカーニバル [新装版] / ハヤカワ文庫SF (407P) ・ 2013年 9月 (131006-1010) 】 訳:伊藤典夫 ・内容 ブラッドベリの幻の作品集として名高い処女短篇集『黒いカーニバル』から精選した作品にウィアード・テールズなどのパルプ…

酉島伝法 / 皆勤の徒

今年最もてこずった一冊。つくづく自分にはハードSF脳がないのを思い知った。 【 酉島伝法 / 皆勤の徒 / 創元日本SF叢書 (344P) ・ 2013年 8月 (130926-1008) 】 ・内容 百メートルの巨大な鉄柱が支える小さな甲板の上に、“会社”は建っていた。語り手は…

ジョージ・オーウェル、開高 健 / 動物農場

偶然の成り行きだが、これで今年『すばらしき新世界』と『ユートピアだより』と『動物農場』と、ある流れの作品を読んだことになる。 【 ジョージ・オーウェル、開高 健 / 動物農場・付「G・オーウェルをめぐって」 / ちくま文庫 (276P) ・ 2013年 9月 (130…

ウィリアム・モリス / ユートピアだより

【 ウィリアム・モリス / ユートピアだより / 岩波文庫 (382P) ・ 2013年 8月 (130921-0925) 】 NEWS FROM NOWHERE by William Morris 1891 訳:川端康雄 ・内容 目覚めると、そこは22世紀のロンドン― 緑したたり、水は澄み、革命ののち人々が選びとった「…

畑中章宏 / ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか

新美南吉「ごんぎつね」が小学四年用国語教科書の定番であるということに触発されて…… ちょうどこんな本が出たので読んでみた、第三弾。 【 畑中章宏 / ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか 新美南吉の小さな世界 / 晶文社 (224P) ・ 2013年 8月 (130914-0917) …

川島幸希 / 国語教科書の闇

新美南吉「ごんぎつね」が小学四年用国語教科書の定番であるということに触発されて…… ちょうどこんな本が出たので読んでみた、第二弾。 【 川島幸希 / 国語教科書の闇 / 新潮新書 (188P) ・ 2013年 8月 (130911-0913) 】 ・内容 国語の教科書が、変だ。「…

佐野 幹 / 「山月記」はなぜ国民教材となったのか

新美南吉「ごんぎつね」が小学四年用国語教科書の定番であるということに触発されて…… ちょうどこんな本が出ていたので読んでみた。 【 佐野 幹 / 「山月記」はなぜ国民教材となったのか / 大修館書店 (311P) ・ 2013年 7月(130906-0910) 】 ・内容 「李徴…

馬場マコト / 従軍歌謡慰問団

8/14放送のNHKスペシャル「従軍作家たちの戦争」は日中・太平洋戦争に報道部員として従軍し〈兵隊・三部作〉を書いた火野葦平を中心に、戦地に派遣された文学者たち、いわゆる‘ペン部隊’の戦争協力を描いたドキュメンタリーだった。 ペン部隊同様に、国家総…

中脇初枝 / わたしをみつけて

【 中脇初枝 / わたしをみつけて / ポプラ社 (257P) ・ 2013年 7月(130827-0829) 】 ・内容 施設で育ち、今は准看護師として働く弥生は、問題がある医師にも異議は唱えない。なぜならやっと得た居場所を失いたくないから― 『きみはいい子』で光をあてた家…

コラム・マッキャン / 世界を回せ

今はなきワールドトレードセンター(WTC)屋上で命綱なしでの綱渡りを決行したフィリップ・プティ(Philippe Petit)のドキュメンタリー映画『マン・オン・ワイヤー』を見たのは2009年8月。 プティの伝説的パフォーマンスと9・11をつなぐ作品がいつか書かれるの…

開高健 名言辞典

最近おぼえた格言 ― ・ ゆっくり行く者は遠くまで行ける (出典不明) ・ 老人が亡くなることは、図書館が焼け落ちるのに等しい (アフリカの諺、らしい) ・ 永遠に生きる者のごとくに学び、明日死ぬ者のごとく生きる (ガンジー) ・ この天と地のあいだに…

コニー・ウィリス / 航路 (再読)

三年ぶりの再読。今回は流し読みして三日ぐらいで読んでしまおうと思っていたのに…… 【 コニー・ウィリス / 航路 / ハヤカワ文庫SF (上656P、下672P) ・ 2013年 8月(130815-0819) 】 PASSAGE by Connie Willis 2001 訳:大森望 ・内容 マーシー総合病院で、…

オルダス・ハクスリー / すばらしい新世界

【 オルダス・ハクスリー / すばらしい新世界 / 光文社古典新訳文庫 (433P) ・ 2013年 6月(130810-0814) 】 BRAVE NEW WORLD by Aldous Huxley 1932 訳:黒原敏行 ・内容 西暦2540年。人間の工場生産と条件付け教育、フリーセックスの奨励、快楽薬の配給に…

美智子皇后 / 橋をかける

少し前の中日新聞朝刊コラムに紹介されていた、こんなお話― 名古屋市の児童書専門店・メルヘンハウスに届いた、あるお母さんからの手紙。彼女は毎日、幼い息子に絵本の読み聞かせをしていた。自分も楽しいし、息子が本を好きになってくれたのは何より嬉しか…

新美南吉童話集

【 新美南吉童話集 / 岩波文庫(334P) ・ 1996年(130730-0805) 】 ・内容 新美南吉(1913−43)はわずか29歳、二冊の童話を出版しただけでこの世を去ったが、底抜けに明るく、ユーモアと正義感にあふれた彼の童話は、今日多くの人の心をとらえ、賢治、未明、…

松下竜一 / 暗闇に耐える思想

【 松下竜一講演録 暗闇に耐える思想 / 花乱社(158P) ・ 2012年 1月(130804-0807) 】 ・内容 月に一夜でも、〈暗闇の思想〉に沈み込み、今の明るさの文化が虚妄ではないのかどうか、ひえびえとするまで思惟してみようではないか ― 東大入学式講演、「暗闇…

細見 周 / 熊取六人組

【 細見 周 / 熊取六人組 反原発を貫く研究者たち / 岩波書店 (224P) ・ 2013年 3月(130727-0803) 】 ・内容 いわゆる御用学者とは対照的に、長年、「原発の安全性を問う」立場で研究を続ける研究者たちがいる。京都大学原子炉実験所の今中哲二・海老澤徹…