宮下奈都 / ふたつのしるし

宮下奈都さんの新刊は幻冬舎の「GINGER L(ジンジャーエール)」という季刊文芸誌に連載されていた作品。なるべく粗筋に触れないように感想を書く。 【 宮下奈都 / ふたつのしるし / 幻冬舎(216P)・2014年9月(140928−0930) 】 ・内容 「勉強ができて何が…

尾崎真理子 / ひみつの王国 ― 評伝 石井桃子

【 尾崎真理子 / ひみつの王国 ― 評伝 石井桃子 / 新潮社(575P)・2014年6月(140922−0927) 】 ・内容 この人がいなかったら、日本の「子どもの本」はどうなっていただろう―。『ノンちゃん雲に乗る』『クマのプーさん』など、作家として翻訳者として編集者…

エスパルス2014:25節 / バトル・オブ・シミズ

【 9月13日 / Jリーグ第23節 : 清水 1-4 浦和 / ‘運動会日和’ 】 磐田がいないために今年は一回だけのエコパでの試合。試合前に行われた恒例イベント「ご当地キャラ大運動会」のゆるゆる加減に和む。クシコスポスト、天国と地獄、ウィリアム・テル序曲… 運動…

M・R・コワル / ミス・エルズワースと不機嫌な隣人

【 メアリ・ロビネット・コワル / ミス・エルズワースと不機嫌な隣人 / ハヤカワ文庫FT(370P)・2014年4月(140918−0920) 】SHADES OF MILK AND HONNEY by Mary Robinette Kowal 2010 訳:原島文世 ・内容 19世紀初頭、女性のたしなみとして日常的に幻を創…

星野智幸 / 夜は終わらない

これまでで一番長い(?)星野智幸さんの本。500ページ、これは手強そうと一週間ぐらいかけて読むつもりでいたのに、予想外のリーダビリティの高さに驚き、星野智幸ってこんなに面白かったっけ?と嬉しい悲鳴を上げつつ、三日と少しで読了。またまた寝不足の数…

吉田司 / 下下戦記

今年の夏、ある一篇の詩を探して古本屋めぐりをした。 終戦の日前後の新聞コラムにその詩の一部が紹介されていて、全文を読みたいと思ったのだ。作者もタイトルも書かれてあったからわかっている。ただ、何という詩集に収められているのかがわからない。とり…

千早茜 / 男ともだち

(記事にはしてないが)今年三冊めの千早茜さん。『魚神』後ごぶさただったが、『からまる』(角川文庫)が良かったので『あとかた』(新潮社)も読んで、現在◎のお気に入りになっている。 【 千早茜 / 男ともだち / 文藝春秋(237P)・2014年5月(140907−09…

奥泉光 / 東京自叙伝

【 奥泉光 / 東京自叙伝 / 集英社(432P)・2014年5月(140830−0905) 】 ・内容 維新から太平洋戦争、サリン事件からフクシマ第1原発爆発まで、無責任都市トーキョーに暗躍した謎の男の一代記! 超絶話芸で一気読み必至の待望の長編小説。世の中、なるように…

上遠恵子 / レイチェル・カーソン いまに生きる言葉

【 上遠恵子 / レイチェル・カーソン いまに生きる言葉 / 翔泳社(170P)・2014年7月(140829−831) 】 ・内容 いまだに根強い人気を誇るレイチェル・カーソンの思想と生涯を、あまり知られていない側面に光を当て、当時の写真や彼女がつむいだ言葉とともに紐…

立松和平 / 毒 風聞・田中正造

【 立松和平 / 毒 風聞・田中正造 / 東京書籍(313P)・1997年(140824−827) 】 ・内容 足尾銅山の鉱毒によって破壊された谷中村。その被害に真正面に対峙した田中正造― 渡良瀬川に棲むナマズやカエル等、小動物の目を通して重層的に描く〈闇〉の日本。立松…

エスパルス2014:21節 / ジンクス

【 8月20日 / 天皇杯三回戦 : 清水 2-1 札幌 / ‘ちびっ子軍団’ 】 今年のSBSカップ国際ユースの静岡も小さかった。水谷拓磨、望月大らエスパルスユース組と藤枝東高の小谷君、清水桜ヶ丘高の大石君らで構成するアタッカー陣は、みんな160cm台。代表ユースと…

レイ・ブラッドベリ / 華氏451度[新訳版]

再読の流れでもう一冊。 自分的に「再読」というと、まっ先に思い浮かぶのは『高慢と偏見』である。しばらく離れているつもりだったのに、困ったことにまた新訳が出た。小山太一による『自負と偏見』(新潮文庫)である。 特に目当てがあるわけではなくふら…

J・ティプトリー・ジュニア / たったひとつの冴えたやりかた

『アルジャーノン』が空振りだったのでリベンジの再読。切り札の一冊にご登場を願った。 【 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア / たったひとつの冴えたやりかた / ハヤカワ文庫SF(387P)・1987年 (140816−818) 】The Starry Rift by James Tiptree Jr. 19…

ダニエル・キイス / アルジャーノンに花束を

ダニエル・キイス氏が亡くなったので、‘夏の課題図書’として約二十年ぶりに再読したのだが…… 【 ダニエル・キイス / アルジャーノンに花束を / 早川書房 ダニエル・キイス文庫(485P)・1999年 (140812−816) 】FLOWERS FOR ALGERNON by Daniel Keyes 1959 …

片岡たまき / あの頃、忌野清志郎と

【 片岡たまき / あの頃、忌野清志郎と ボスと私の40年 / 宝島社(255P)・2014年7月 (140812−813) 】 ・内容 ド派手メイクに隠されたロックスターの素顔とは?一人の熱狂的ファンが衣裳係としてツアーへ同行するに至るまで。清志郎が『COVERS』、タイマー…

ジョー・ウォルトン / 図書室の魔法

ブログを休んでいた期間に読んだ本の一部だけメモ。 ・W.ムーア「解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯」(河出文庫)は皆川博子「開かせていただき」「アルモニカ」の元ネタとなった、18世紀英国に実在した人類史上初の解剖医の人物伝にして奇怪痛快な怪作。…

エスパルス2014:19節 / 大榎克己、エスパルス新監督に

【 8月9日 / Jリーグ第19節 : 清水 1-0 徳島 / ‘エスパルスを取り戻そう’ 】 大榎克己が清水エスパルス第14代監督に就任した(エスピノーザから数えて)。 今年度Jリーグ(J1、J2、J3)の監督を一覧すると…… 風間八宏(川崎)、柳下正明(新潟)、長谷川健…

梅田明宏 / 礎・清水FCと堀田哲爾が刻んだ日本サッカー五〇年史

先月下旬、最寄りの図書館の新入荷コーナーにあったのを見つけてすぐ借りてきた。清水FCの歴代選手名簿も付録されていたので手もとに置いておきたくなり、結局買ってしまった。4300円。値段だけの価値あり。 【 梅田明宏 / 礎・清水FCと堀田哲爾が刻んだ日…

山尾悠子 / ラピスラズリ

実家で過ごす夏休み。朝遅く起きて入道雲を眺めていると、目の端でちょろちょろ動くものがあった。サンダルをつっかけて庭に出てみると…… おっ!? ニホントカゲの子ども(幼体)だった。どんな天の配剤によるものか、金黒ストライプのメタリックボディに鮮や…

松本博文 / ルポ 電王戦

【 松本博文 / ルポ 電王戦 人間vs.コンピュータの真実 / NHK出版新書(256P)・2014年6月 】 ・内容 プロ将棋棋士とコンピュータが真剣勝負を繰り広げる電王戦シリーズ。今年おこなわれた第3回大会は、プロ棋士側の1勝4敗に終わった。かつてはルールすら守…

宮下奈都 / はじめからその話をすればよかった

【 宮下奈都 / はじめからその話をすればよかった / 実業之日本社 (320P) ・ 2013年10月 (131023-1027) 】 ・内容 単独の著書として10冊目にあたり、『終わらない歌』以来1年ぶりとなる本書は、著者初のエッセイ集。小説を書く理由、自著の創作秘話、三人…

石牟礼道子 / あやとりの記

今月はじめ、水銀による健康被害や環境汚染の防止を目的に熊本県水俣市で開かれた「水俣条約外交会議」。世界から約140の国と地域の代表が集った開会式に寄せたビデオメッセージで安倍首相は 「水銀による被害と、その克服を経た我々だからこそ、世界から水…

岩城けい / さようなら、オレンジ

【 岩城けい / さようなら、オレンジ / 筑摩書房 (176P) ・ 2013年 8月 (131011-1014) 】 ・内容 オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の息子を育てている。母語の読み書きすらままならない彼…

レイ・ブラッドベリ / 黒いカーニバル

【 レイ・ブラッドベリ / 黒いカーニバル [新装版] / ハヤカワ文庫SF (407P) ・ 2013年 9月 (131006-1010) 】 訳:伊藤典夫 ・内容 ブラッドベリの幻の作品集として名高い処女短篇集『黒いカーニバル』から精選した作品にウィアード・テールズなどのパルプ…

酉島伝法 / 皆勤の徒

今年最もてこずった一冊。つくづく自分にはハードSF脳がないのを思い知った。 【 酉島伝法 / 皆勤の徒 / 創元日本SF叢書 (344P) ・ 2013年 8月 (130926-1008) 】 ・内容 百メートルの巨大な鉄柱が支える小さな甲板の上に、“会社”は建っていた。語り手は…

ジョージ・オーウェル、開高 健 / 動物農場

偶然の成り行きだが、これで今年『すばらしき新世界』と『ユートピアだより』と『動物農場』と、ある流れの作品を読んだことになる。 【 ジョージ・オーウェル、開高 健 / 動物農場・付「G・オーウェルをめぐって」 / ちくま文庫 (276P) ・ 2013年 9月 (130…

ウィリアム・モリス / ユートピアだより

【 ウィリアム・モリス / ユートピアだより / 岩波文庫 (382P) ・ 2013年 8月 (130921-0925) 】 NEWS FROM NOWHERE by William Morris 1891 訳:川端康雄 ・内容 目覚めると、そこは22世紀のロンドン― 緑したたり、水は澄み、革命ののち人々が選びとった「…

畑中章宏 / ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか

新美南吉「ごんぎつね」が小学四年用国語教科書の定番であるということに触発されて…… ちょうどこんな本が出たので読んでみた、第三弾。 【 畑中章宏 / ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか 新美南吉の小さな世界 / 晶文社 (224P) ・ 2013年 8月 (130914-0917) …

川島幸希 / 国語教科書の闇

新美南吉「ごんぎつね」が小学四年用国語教科書の定番であるということに触発されて…… ちょうどこんな本が出たので読んでみた、第二弾。 【 川島幸希 / 国語教科書の闇 / 新潮新書 (188P) ・ 2013年 8月 (130911-0913) 】 ・内容 国語の教科書が、変だ。「…

佐野 幹 / 「山月記」はなぜ国民教材となったのか

新美南吉「ごんぎつね」が小学四年用国語教科書の定番であるということに触発されて…… ちょうどこんな本が出ていたので読んでみた。 【 佐野 幹 / 「山月記」はなぜ国民教材となったのか / 大修館書店 (311P) ・ 2013年 7月(130906-0910) 】 ・内容 「李徴…