2009-01-01から1年間の記事一覧

ロバート・A・ハインライン/ 夏への扉[新訳版]

短かったこの夏、書店に行くたびに目にしていたこの本。たしか高校生の頃に読んだような、読まなかったような… 当時の表紙は扉を覗き込んでいる猫の後ろ姿がもっと大きく描かれたイラストだったよな。読んだのに内容をよく覚えていないということは、さして…

リー・ツンシン/ 毛沢東のバレエダンサー

【リー・ツンシン/ 毛沢東のバレエダンサー (351P)/徳間書店 ・2009年(090829-0904)】 Mao's Last Danser by Li Cunxin 2003 訳:井上実 内容紹介 貧しい農村出身の少年・李存信は踊る、毛主席のため、家族のために。だが、運命は思わぬ変転をみせ、彼を祖国…

山田詠美/学問

8月17日の中日新聞夕刊に山田詠美さんのインタビュー記事が掲載されていた。近刊『学問』に関する内容だったのだが、二つの点で興味深い話を読めて、俄然読まねば!という気になった。一つめは、この作品が開高健の「食談は食欲のポルノである」という言葉に…

P.G.ウッドハウス/でかした、ジーヴス!

一冊でけっこうお腹いっぱいになった『比類なきジーヴス』以来続刊はスルーしていた〈ウッドハウス・コレクション〉。書店でズラリ並んだシリーズを見て、こんなに出てたのにビックリ!「これ全部持ってるヤツいないだろうな…」と好からぬ妄想が暗雲のごとく…

サガン -悲しみよこんにちは-

サガンといえば、新潮文庫。青春時代の夏休み、書店でヘミングウェイの青い背表紙とサガンのピンクの前に立ち止まる時間は他のコーナーより断然長かったように思う。 高校時代、図書室の「世界文学全集」のサガン集に彼女のモノクロのポートレート写真があっ…

アラン・ベネット/やんごとなき読者

【アラン・ベネット/やんごとなき読者(169P)/白水社・2009年(090812-0813】 THE UNCOMMON READER by Alan Bennett 2007 訳:市川恵理 内容(「BOOK」データベースより) 英国女王エリザベス二世、読書にハマる。おかげで公務はうわの空、側近たちは大あわ…

マン・オン・ワイヤー

本当は昨日観る予定だったのだが、未明の地震で東名は通行止め、JRも復旧作業をしながら徐行運転ということであきらめて今日にした。 ※現在この地震での死者は一名。静岡市の43才の女性会社員が自宅マンションの部屋に積み上げてあった数千冊の本の下敷きに…

フィリップ・プティ / マン・オン・ワイヤー

八月は何かテーマを決めて読書をしようと考えていた。夏休みといえば、読書感想文。小・中学生時代の読書感想文は苦痛でしかなかったのに(『クワガタクワジ物語』は二年連続で提出、『オジロワシを追って』も小6・中1で書いた)、今では進んで読んで書こ…

アメリカの黒人演説集

寮美千子さんを読んだあとでこんな本を読むヤツはいまい。 二、三週間前、帰宅後ぼおっとテレビを見ていたら、オバマ大統領の黒人地位向上協会(NAACP)100周年記念演説(2009.7.16)が伝えられていた。ニュースだったかニュース番組中の特集だったのかも覚え…

寮美千子/ノスタルギガンテス

久しぶりに寄った古本屋で見つけることができた。なんてタイムリーな! 【寮美千子/ノスタルギガンテス(218P)/パロル舎・1993年(090802-0804】 内容(「MARC」データベースより) 生成する廃墟、世界の裂け目、あらゆる名づけ得ぬ廃墟。ノスタルギガンテス…

寮美千子/夢見る水の王国(上)(下)

「英国伝統ミステリのコクとユーモアがたっぷり!」という帯の文句に惹かれて、ある新刊本を読んでいたのだが、どうも面白くない。雷雨で停電して外部と連絡がとれない、外にも出られないということから密室殺人の状況になるのだが、死体が見つかったという…

稲葉真弓/海松

前回にも書いた佐野元春‘コヨーテ、海へ’にはこんな一節がある。「気まぐれな進歩はもういい、まだ見ぬ朝陽がきっと何処かにあるはず」 本書で稲葉真弓は「もう私は新しい時代なんて見たくもないし、トレンディなものも欲しいとは思わない」と書く。 五十代…

佐野元春 ライブハウス・ツアー“COYOTE”

ヴィジターズかカフェ・ボヘミアの頃に観て以来の佐野元春ライブ!半休を取って名古屋まで行ってきた。 【佐野元春&THE COYOTE BAND ライブハウス・ツアー“COYOTE”】at ZEPP NAGOYA 09.07.21 「コヨーテ」と呼ばれる、ある男の視点で切り取った12篇からなる…

佐藤亜紀/激しく、速やかな死

【佐藤亜紀/激しく、速やかな死(199P)/文藝春秋・2009年(090716-0719)】 内容(「BOOK」データベースより) 危険を孕まぬ人生は、生きるに値しない。サド侯爵、タレイラン、メッテルニヒ夫人、ボードレールetc.―歴史の波涛に消えた思考の煌きを華麗な筆で描…

カズオ・イシグロ/夜想曲集

自分はテニスをやるわけでも好きなわけでもないのに、深夜のウィンブルドン中継は学生時代から何となく見る習慣になっている。毎年6月の恒例行事みたいなもの。 もう十数年も前だと思う、「あ、また雨なんだ」テレビをつけたらカバーをかけられたセンターコ…

星野智幸/虹とクロエの物語

【星野智幸/虹とクロエの物語(184P)/河出書房新社・2006年(090709-0711)】 虹子と黒衣(クロエ)はボールを蹴り合うことで心を通じ合う子供の頃からの親友だった。二人だけの「合宿」で長崎県沖の孤島を訪れて「ユウジ」に出会って以来、互いに距離を置いて…

梨木香歩/沼地のある森を抜けて

糠床から幽霊のように人が現れる話だと聞いて敬遠していたのだが、『遠くの声に耳を澄ませて』の例の[土鍋で飯を炊く女]が糠床も大事に持っていたので、読んでみる気になった。(←どんな理由だよ!?) 【梨木香歩/沼地のある森を抜けて(406P)/新潮社・2005…

ミーシャ/ホロコーストと白い狼

6月、7月と土曜出勤が続くので、今日は代休を取った。名古屋まで行って映画を観てきた。地元にはショッピング・モールに併設されたシネコンが3つもあるのに、ハリウッドものとテレビドラマの映画化作品しかやってないお粗末な状況。マーチン・スコセッシ…

星野智幸/ファンタジスタ

【星野智幸/ファンタジスタ(228P)/集英社・2002年(090619-0625)】小学校で起こった毒入り給食事件と森で暮らすホームレスのつながりを探る新聞記者の『砂の惑星』(芥川賞候補作)、フットサルに熱中している女性の目線で元人気サッカー選手が首相になる社…

藤島 大/ラグビー大魂

一番好きなスポーツ・ライター、というか、日本人の物書きの中で一番好きな人、といってもいい藤島大さん。購読している中日新聞・火曜夕刊の「スポーツが呼んでいる」はもう十年以上続く連載コラム。毎週ほぼ欠かさず読んでいて心に残る記事も多い。中でも…

田中千恵/ウィ・ラ・モラ オオカミ犬ウルフィーとの旅路

【田中千恵/ウィ・ラ・モラ オオカミ犬ウルフィーとの旅路(258P)/偕成社・2009年(090608-0613)】 大学で探検部に所属しカナダ北極圏での生活経験もある著者は、2004年の二十代最後の夏をカナダ西岸のレインフォレスト(温帯雨林)で過ごそうと、バックパック…

宮下奈都/遠くの声に耳を澄ませて

一つ言っておきたいことがある。この本はアマゾンで取り寄せた。村上春樹や東野圭吾にばかりスペースを割いて、この本を置かない書店は怠慢だ。 【宮下奈都/遠くの声に耳を澄ませて(222P)/新潮社・2009年(090607-0610)】 内容(「BOOK」データベースより) …

星野智幸/ロンリー・ハーツ・キラー

先週から職場でも勤務中のマスク着用が義務づけられた。そのくせマスクの在庫が会社にないから、しばらくは毎日交換ではなく汚れたら各々交換していくというので、みんな不満ブーブーだ。 ちなみに地元の新型インフルエンザ感染報告はいまだゼロ。数日前に県…

L.アームストロング/ただマイヨ・ジョーヌのためでなく

米原万里『打ちのめされるようなすごい本』(文春文庫・2009年)を先々週から読んでいる。目がくらむほど活字も内容もぎっしり詰まった500Pを超える分厚い本なのだが、居間に置いておいて新聞やニュースを見たあとで五分か十分ぐらいずつ読むというペースで…

柳広司/虎と月

四月に『シートン(探偵)動物記』を読んだ。『トーキョー・プリズン』や『ジョーカー・ゲーム』が話題になってもハード・ボイルド調は自分の趣味ではないと敬遠していたのだが、この作家にこういうパスティーシュの愉快な一面があるのを知って、実に意外だ…

中山可穂/ケッヘル(上)(下)

刊行時に読み逃していた作品が待望の文庫化!キース・ジャレットとチック・コリアが一緒にモーツァルトを弾くのをNHKで観たのは二十歳前後だったか。いつもは感情のおもむくままにエモーショナルな演奏をするキースが神妙な面持ちでかしこまり、楽譜と指…

中村文則/何もかも憂鬱な夜に

【中村文則/何もかも憂鬱な夜に(138P)/集英社・2009年(090517-0519)】地方の拘置所の刑務官である「僕」は、孤児として施設で育った。子供のときから心の奥に暴力衝動を抱えていて、表面上は厳格な看守を装いつつも、現在でもときどき発作的に暴発しそうに…

C.ジョーンズ/絶対帰還。

現在も日本人宇宙飛行士・若田光一さんが滞在している国際宇宙ステーション(ISS)の話題も、ここのところ音沙汰がない。3月のシャトル・ディスカバリー打ち上げとISSでの活動開始時はあれほど報道があったのに。 といっても、自分も宇宙には大して関心がない…

K・レヒアイス/ウルフ・サーガ(上)(下)

『オオカミと生きる』をゲットした古本屋でまたまた見つけてしまった!ブック・オフとかのチェーン店ではないから、もしかしたら同じ人が手放した本かもしれないと思って両方の匂いを確かめてみたら、同じメスオオカミの匂いがする! 地元に女オオカミ族がい…

斎樹真琴/十四歳の情景

基本的に小説でもドラマでも子供の話は好みではない。自分の思春期を思い出すと気恥ずかしいし、もはや「瑞々しい青春の輝き」的なものを小説に求める年齢でもない。それと、だいの大人が少年少女を主人公に書いてちゃだめだろ、同年代を納得させるものを書…